2014/05/07

【BIM】導入しやすく留意点まとめた「BIMガイドライン」 官庁営繕部

試行3件目の前橋地方合同庁舎モデル
「設計者や施工者のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)導入を喚起したい」と、国土交通省官房官庁営繕部整備課の山田稔施設評価室長は強調する。4月から運用を始めた『BIMガイドライン』は、受注者が自主的にBIMを導入するための留意点をまとめた。このガイドラインには「できる部分から無理せず導入してほしい」との発注者としての気遣いがある。

 現在3件目の試行プロジェクト「前橋地方合同庁舎(仮称)」が進行する国交省官庁営繕部。試行案件を通してBIM導入の効果や課題を整理してきた。試行初弾の新宿労働総合庁舎では3次元シミュレーションが計画時に予定していたライトシェルフの設置を取り止める判断指標となり、静岡地方法務局藤枝出張所庁舎では現場作業員への情報共有に3次元モデルデータが効果を発揮した。
 山田室長は「このようにBIMの可視化効果が起点となり、関係者のコミュニケーションはより活発になったが、一方で3次元モデル作成の精度レベルについて悩む声も多く聞こえた」と振り返る。そこでガイドラインには基本計画、基本設計、実施設計の3段階に区分けして、3次元モデルの詳細度レベルを盛り込んだ。
 意匠の実施設計では、これまで内装仕上げや建具・ガラス、手すりなどの詳細な仕様を描く必要はなかったが、3次元モデルを作成する場合には形状情報や属性情報を盛り込むことを示した。あえてモデル詳細度の目安を明らかにすることで「設計者に悩まずBIMを導入してもらいたい」と考えた。
 ガイドラインは、4月1日に契約を結ぶ案件から適用をスタートさせた。設計や施工を問わず、契約後にBIM導入を決めた場合でも適用は可能という。設計者や施工者がBIMで干渉チェックを行うケースなど部分的な活用でも利用できるが、ガイドラインを適用した場合には、契約上の成果としてもその履行が条件になる。

詳細度のレベルに悩む設計者は多い
設計業務の成果はあえて「2次元図面」と明記した。BIMモデルから2次元図面を出力する場合にはソフトウエアの制約から現時点では必要な寸法線が自動表記されない。そこで出力後に寸法線を加筆する対応を示した。完全な出力図面を作成することにばかりこだわってほしくない配慮からだ。
 「ガイドラインはあくまでもBIMの利用を促進することを目的にまとめたと理解してほしい。受発注者双方が有効に活用するためには、一定のルールに基づいて運用することが欠かせない。3次元モデリングをやり過ぎてしまう懸念だけでなく、中途半端に行うことで後々の手戻りにならないように配慮したかった」
 公共発注機関は、病院の建て替え事業に導入を決めた沖縄県のように、都道府県レベルで個別事業にBIM導入を促す動きが出始めたほか、中央官庁でも法務省が試行プロジェクトをスタートするなどBIM導入の機運が高まっている。国交省は4月の全国営繕主管課長会議に続き、中央官庁営繕担当課長連絡調整会議でもガイドラインを紹介する予定だ。
 山田室長は「これでガイドラインは完成ではない。中身は導入事例を通して随時見直す。受注者のメリットは発注者側のメリットとして返ってくる。BIM事例が多ければ多いほど、われわれもスパイラルアップできる」と力を込める。
 そこには、今後拡大する導入事例の成果をガイドラインに吸収する狙いがある。抽出した事例はホームページでも公開。特に維持管理段階の内容は、まだ不十分であるだけに民間事例を情報収集し、その留意点をガイドラインに反映する考えもある。
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