福島給食センターのBIMモデル |
【執筆者から:取材の過程で、関係者からは福島第一原子力発電所の収束にかける思いが伝わってきた。また福島復興の陣頭指揮を執っている石崎復興本社代表がBIMの可能性について、しっかりした認識を持っていることに驚いた】
福島第一原子力発電所の現場作業員に食事を供給する拠点として計画された給食センターの建設地が、福島県大熊町大川原地区に内定したのは2013年11月。敷地が確定したのを受け、年明けすぐに測量にとりかかった。先行して建設工事がスタートした大型休憩所の竣工を見据え、15年3月末の完成が課せられた。
建設中の大型休憩所工事現場 |
ただ、給食センターの給排水要件は厳しく、衛生管理の問題から計画量に違いが生じてしまえば、再申請を余儀なくされる。規模はS造2階建て延べ約3500㎡。一度に約3000食を提供できる能力を持つ。予定している完成時期に間に合わせるには、最低でも6月前までの着工がタイムリミットだった。
東京電力は東日本大震災を受け、復興の早期実現を目的にPMr制を導入した。福島第一原発の廃炉を始め復興関連の事業には、スピードアップが求められている。計画の検討期間を少しでも短くし、できるだけ早く工事を終わらせる必要がある。プロジェクトを統括するPMrには、以前にも増して迅速に的確な情報を社内で共有する役割が求められるようになった。
展示スペース・食育ロビーのイメージ |
福島復興の陣頭指揮をとる石崎芳行代表執行役副社長福島復興本社代表も、給食センター建設工事で展開するBIM活用の報告を聞きながら、「廃炉に向けた今後の長きにわたる作業の中で、大いにBIMの可能性が発揮されるだろう」と期待を込める。
廃炉に向けた過酷な作業を強いられている福島第一原発の現場では、遠隔作業ロボットの活躍も期待されている。作業員が入れない場所も多く、今後はロボットによる作業を余儀なくされるケースも少なくない。ロボット導入には内部の3次元測量が手段の1つとして欠かせない。内部の3次元モデルデータ基盤が構築できれば、ロボット作業を的確に進めることができるからだ。
児玉氏は「前人未踏の作業を強いられる中で、最前線の現場関係者には常に最適な選択が求められる。その有効性を検証する手段としても、BIMが欠かせないことは言うまでもない。給食センターをきっかけに、導入案件は確実に増えていくだろう」と考えている。
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