2014/05/28

【BIM】BIMを使うしかない!! スピード施工の東電・福島給食センター【記者コメ付き】

福島給食センターのBIMモデル
「スピードアップには、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の活用しか手だてはなかった」。東京電力の原子力安全・統括部Jヴィレッジ復旧推進グループマネージャーで、29日に着工する福島給食センター建設事業のPMr(プロジェクトマネジャー)を務める児玉達朗氏は候補地選定から設計、開発許可に至るまでの道のりを振り返り、そう確信している。
【執筆者から:取材の過程で、関係者からは福島第一原子力発電所の収束にかける思いが伝わってきた。また福島復興の陣頭指揮を執っている石崎復興本社代表がBIMの可能性について、しっかりした認識を持っていることに驚いた】
 福島第一原子力発電所の現場作業員に食事を供給する拠点として計画された給食センターの建設地が、福島県大熊町大川原地区に内定したのは2013年11月。敷地が確定したのを受け、年明けすぐに測量にとりかかった。先行して建設工事がスタートした大型休憩所の竣工を見据え、15年3月末の完成が課せられた。
建設中の大型休憩所工事現場
「時間は限られていた。設計に並行して開発許可を得る必要があり、一連の作業と申請を同時にこなせる手段としてBIMに行き着いた」と、児玉氏は明かす。BIMの存在については、設計・施工を担当する前田建設工業から情報提供を受けていた。3次元モデルデータの導入により、設計段階から後工程を詳細に確認できるフロントローディング(業務の前倒し)の効果は魅力的だった。
 ただ、給食センターの給排水要件は厳しく、衛生管理の問題から計画量に違いが生じてしまえば、再申請を余儀なくされる。規模はS造2階建て延べ約3500㎡。一度に約3000食を提供できる能力を持つ。予定している完成時期に間に合わせるには、最低でも6月前までの着工がタイムリミットだった。
 東京電力は東日本大震災を受け、復興の早期実現を目的にPMr制を導入した。福島第一原発の廃炉を始め復興関連の事業には、スピードアップが求められている。計画の検討期間を少しでも短くし、できるだけ早く工事を終わらせる必要がある。プロジェクトを統括するPMrには、以前にも増して迅速に的確な情報を社内で共有する役割が求められるようになった。
展示スペース・食育ロビーのイメージ
保健所など関係機関との協議は通常、設計がある程度完了してから行うが、同時並行的に厨房などの細かな部分を詰めながら設計を進めてきた。3次元設計の採用によって、より細かな部分まで部材の仕様を決めることができ、調達についても従来より前倒しできる。「PMrとして、いつ、どこに、何をという具体的な状況をリアルタイムに報告することも求められている。経営層との情報共有も含めプロジェクトをまとめていく過程で、事前に結果を予測できるBIMの効果は大きい」
 福島復興の陣頭指揮をとる石崎芳行代表執行役副社長福島復興本社代表も、給食センター建設工事で展開するBIM活用の報告を聞きながら、「廃炉に向けた今後の長きにわたる作業の中で、大いにBIMの可能性が発揮されるだろう」と期待を込める。
 廃炉に向けた過酷な作業を強いられている福島第一原発の現場では、遠隔作業ロボットの活躍も期待されている。作業員が入れない場所も多く、今後はロボットによる作業を余儀なくされるケースも少なくない。ロボット導入には内部の3次元測量が手段の1つとして欠かせない。内部の3次元モデルデータ基盤が構築できれば、ロボット作業を的確に進めることができるからだ。
 児玉氏は「前人未踏の作業を強いられる中で、最前線の現場関係者には常に最適な選択が求められる。その有効性を検証する手段としても、BIMが欠かせないことは言うまでもない。給食センターをきっかけに、導入案件は確実に増えていくだろう」と考えている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

0 コメント :

コメントを投稿