ダムは洪水の一部を貯め込むことにより、下流河川に流す水の量を減らし、水害を防止・軽減する。国土交通省によると、13年1月から10月までに同省所管の337ダムで、延べ882回の洪水調節が行われた。1991年以降の年間平均値491回を大幅に上回り、過去23年間で2番目に多い回数となった。この数字からも、昨年はいかにダムが活躍したかが分かる。
◇台風18号
9月に列島を縦断した台風18号は、各地で大規模な出水を引き起こした。京都市を流れる桂川では、一部で水位が堤防天端まで上昇し越水が生じたが、日吉ダム(京都府南丹市)の洪水調節と土のう積みにより堤防決壊を免れた。
日吉ダムでは、東京ドーム36杯分に相当する約4460万m3の水を貯留。下流へ流す水量を最大で約9割も低減した。ダムがなく、久我橋下流の右岸堤防が決壊したと想定すると、約1万3000戸の浸水、約1兆2000億円の被害が発生したと推定されている。日吉ダムは年末の『日本ダムアワード2013』で、最も活躍したダムとして「大賞」と「洪水調節賞」をダブル受賞している。
台風18号は東北地方にも豪雨をもたらした。四十四田ダム(盛岡市)には、過去最大となる毎秒1468m3の水が流入。御所ダム(同)の洪水調節効果も合わせ、北上川の水位を約3m下げ氾濫を回避した。ダムが整備されていなければ、計画高水位を大きく上回る出水となり、盛岡市街地で約7500戸が浸水し、約3200億円の被害が出ていたと試算されている。
台風18号の時の四十四田ダム |
◇盛岡の推定被害は5500億円
盛岡市にある両ダムは、低気圧による8月の豪雨でも大きな効果を発揮した。この時、御所ダムにはこれまでの最大流入量の1.7倍に当たる毎秒3733m3の水が流れ込んだ。洪水調節で下流の水位は約4m低下。ダムがなければ、水位は堤防高を約1m超過し、約1万1700戸の浸水、約5500億円の被害につながったと推定される。
また、御所ダムの湖面には、平均的な年間捕捉量の約25倍に相当する約2万6000m3もの流木などが溜まった。これがそのまま下流に流れていれば、堤防や橋梁などに損傷を与えたり、詰まりで流下阻害や取水障害を招く。流木による2次的被害の軽減にも貢献したわけだ。
◇青森、山口でも
台風18号は青森県の岩木川流域でも出水を起こしたが、浅瀬石川ダム(黒石市)と目屋ダム(西目屋村)が機能し、下流の弘前市、鶴田町、板柳町の浸水被害を防いだ。両ダムがなかった場合の浸水状況をシミュレーションした結果、約1万1000戸の浸水、約1900億円の被害が生じたと見られている。
山口県萩市の中心部を貫流する阿武川では7月、降り始めからの総雨量が流域平均で145mmを記録した。ここでも、阿武川ダム(同市)が水位上昇を抑え、下流部の浸水被害を未然に防いだ。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
0 コメント :
コメントを投稿