2014/01/09

【本】『首都高物語』 都市の道路に夢を託した技術者たち

首都高速道路の現在の総延長は301.3㎞。1962年12月20日に京橋~芝浦が開通した1号線は、わずか4.5㎞だった。50年かけて首都の道路ネットワークを大きく進化させてきた。
 本書は、首都高の開通50年を契機に、多くのOBや有識者の膨大な生の声を中心に、その歩みをまとめている。
 物語は、57年8月22日の東京都市計画地方審議会からスタートする。計画のグランドデザインを、用地買収、事業費、スケジュールをいかに調整して実現するのか。こうした議論の内容にまで踏み込み、当時のアイデアを紹介している。

 また首都高速は、土木技術において数々の金字塔を打ち立てた。その結晶の1つとして語り継がれるのが、横浜ベイブリッジとレインボーブリッジである。斜張橋と吊り橋という、まったく異なる形式の構造物を実現した技術アプローチが本書には収められている。
 都市土木の観点からは、これまで鉄道主体だったシールドトンネルを、道路トンネルへ果敢に導入した。中央環状新宿線を経て、現在も建設中の中央環状品川線、そして横浜環状北線へと、日本初の地中ランプ構造を今も進化させている。
 計画、用地買収交渉、技術開発、建設、開通という各フェーズだけでなく、料金徴収から維持管理メンテナンス、そして海外への技術移転と、首都高が果たしている役割は現在も大きい。本書に触れると、その懐の深さに改めて驚かされる。(青草書房・2200円)
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)



Related Posts:

  • 【本】こども目線で地球温暖化防止 『やりくりーぜちゃんと地球のまちづくり』 登場人物は、環境について常に考えている中学1年生のやりくりーぜちゃんとクラスメートのけずるくん。二人は地球温暖化を防ぐにはどうすればいいか、CO2の発生の仕組みから効率的にエネルギーを使う工夫、昔ながらの知恵「気化熱利用」などについて話し合いながら理解を深めていく。そして、身近にある川の水や太陽光などを建物に利用することによって、温暖化防止につながることも教えてくれる。  日建設計グループに所属する女性スタッフ4人が制作しただけあって、地球… Read More
  • 【本】美しさは屋根にあり 『屋根の日本建築』著者、今里隆氏に聞く 「日本の山里に行くと、遠くにまず見えてくるのが一際高い瓦葺きの寺の屋根。近づいて行くと点在する茅葺き屋根の民家や農家が見えてくる。親鳥とひな鳥のように、寺がその村を抱えて守っているような印象を受ける。美しい景色だと思う」 著者である建築家の今里隆氏は、失われつつある日本の風景に欠かせないのが屋根だと言う。恩師の建築家・吉田五十八から学び、60余年の建築人生で培った信念の一つが「日本建築の美しさは屋根にある」という思いだ。  日本の屋根の特徴… Read More
  • 【ダム写真集】新ジャンル確立か!? ダム協、愛好家がぞくぞく発刊!! 日本ダム協会がホームページ写真コンテストの応募を始めたのが2003年。以来毎年回を積み重ね、昨年で第11回となった。この間の応募作品は2779点、うち入賞は150点を数える。この入賞作品150点をすべて掲載した『美しい日本のダム』が発刊された。コンテストで審査委員長を務めてきた土木写真家・西山芳一氏は「応募作品が年を経るごとにそのクオリティーを上げている」とし、「“ダム写真”といったジャンルを確立できそうな勢いだ」と講評を寄せている。  一… Read More
  • 【本】あの熱い戦いを完全収録!!「仙台デザインリーグ2014卒業設計日本一決定戦オフィシャルブック」 ことし3月9日、仙台市で開かれた学部学生の卒業設計展として国内最大規模のコンクールの全貌を納めている。 提出された411作品の中から日本一に岡田翔太郎さん(九大)の「でか山」、日本二に安田大顕さん(東京理科大)の「22世紀型ハイブリッドハイパー管理社会」、日本三に市古慧さんの「界隈をたどるトンネル駅」(九大)が栄誉に輝いた。  ことしのテーマは「建築を叫べ」。せんだいメディアテークに展示された全模型の中から、投票でセミファイナル進出1… Read More
  • 【JIA MAGAZINE】専門家は誰に、何を、どう伝える 新編集長 今村氏に聞く 毎号多彩な分野の特集を組み、一般市民にも分かりやすい内容で建築・都市のあり方を考えるための話題を提供する日本建築家協会(JIA)の会報誌『JIA MAGAZINE』。2013年8月号では建築家の槇文彦氏が新国立競技場を論じた論文「新国立競技場案を神宮外苑の歴史的文脈の中で考える」を掲載して新国立競技場整備のあり方に一石を投じ、社会に大きな影響を与えた。建設産業界全体の情報発信力が問われる中で、専門家は誰に、何を、どう伝えるべきなのか。『JI… Read More

0 コメント :

コメントを投稿