2011/10/07

本紙記者座談会・UIA東京大会 大盛況のうちに幕

会場となった有楽町の東京国際フォーラム
A UIA(国際建築家連合)の東京大会が終わった。JIA(日本建築家協会)にとって日本での大会開催は50年来の悲願だったのだけれど、その思いは反映できたのかな?
B JOB(大会日本組織委員会)やJIAの関係者に幾度となく話を聞いたけど、不安と緊張の色が隠せなかった大会前の雰囲気が、大会中にはずいぶん手応えをつかんだようで晴れやかな表情に変化していたのが印象的だった。今回の大会は、東日本大震災の影響で開催すらも危ぶまれただけに、関係者は胸をなでおろしているだろうね。
A 日本の建築のすばらしさを海外に発信するという目的もあったけど、海外の建築家からの評価はどうだった?
B UIAの財務責任者(treasurer)を務めるシンガポールのゴーチョン・チャーさんは「ベリーグッド。大会は大成功だった。災害や環境などさまざまな話があった。みんなうまくやった」と評価していたよ。
C 海外の参加者と一緒に組織事務所、アトリエ事務所、ゼネコンを見学するツアーに同行したんだ。特に槇文彦さんや妹島和世さんのような世界的に有名な建築家に会った参加者は感激していた。一方で、海外の建築家からみれば、さまざまな形態の設計組織があることが不思議だったみたいだ。
A 国際大会らしく盛り上がったみたいだね。ところで、開会式には天皇、皇后両陛下がご臨席されたけど、国土交通省からは副大臣だった。
B 国交省は最初から大臣ではなく副大臣の予定だったようだね。
D えっ、UIA大会が建築界にとってどういう意味、意義を持つものなのか、ずいぶん前から分かっていたはずだけど……。東日本大震災を受けての国際大会でもあったわけだし、最初から大臣は出ないことになっていたと聞くと、がっかりするなぁ。建築や街づくり、設計、クリエーティブ、文化ということを担う国家行政機関なのに。国土交通省出身の「先生」はプログラムのどれか1つでも見たり聞いたりしたのかな。
B 聞くだけヤボでしょ。
D 情報提供、事前周知という面で、メディアからは評判が悪かったね。
C これまでと比べて、今回の大会がそんなにひどいとは思えない。ただ、日本独特の“ガラパゴス”的な報道体制システムの中にいれば、スケジュールどおりに進行しなかったり、事前アナウンスが不十分だったりすると文句は出るだろうね。
A 事前周知については、予算の関係でPRに限界があったのかな。でも、せっかくの建築界挙げての国際大会なのだから、市民へのアピールは必要だったのではないか。東京国際フォーラムの敷地内では大成功だったけど、一歩外に出るとどうだったのだろうかと物足りなさも感じる。
B 細部にはいろいろな問題があったと思うけど、リーマンショックや直前の震災、原発事故があった中で、5000人規模の国際大会を大きな混乱もなく開催できたことは素直に評価していい。しかも、海外と違って日本では、政治も行政も多くのメディアも市民も、建築や設計に対する理解が薄い。このことは、日本建築界にとって大きな課題だけれど、その逆風の中で、ここまでできたのだから世界に対しても胸を張っていいのではないかな。
C あとは、建築家がいろいろな意味で「敷地を出る」ことが必要になるだろうね。この大会がそのきっかけになれば、本当に成功だったと言えるだろう。

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