2011/10/25

「再利用できるものは絶対逃さない!」石巻地区のがれき処理開始/鹿島JVの佐々木正充所長に聞く

佐々木正充JV所長
 宮城県は、震災で発生した災害廃棄物を県内4ブロックに分けて処理している。最大ブロックは、鹿島・清水建設・西松建設・佐藤工業・飛島建設・竹中土木・若築建設・橋本店・遠藤興業JVが受注した石巻ブロック。約2000億円で災害廃棄物約685万t、津波堆積物約200万tという空前ともいえる量のがれきを処理する。
 23日は現地で安全祈願祭が行われ、他の3ブロックに先駆けて動き出した。誰も経験したことがない業務をどうやって成功させるのか?自らも石巻市民として、地域の復旧に強い思いを寄せる佐々木正充JV所長(鹿島)に話を聞いた。

--この仕事について、どう思いますか? 「これまで原子力発電所やダムの建設に携わってきたが、今回の業務の全容を聞いて、その量、金額の大きさに驚いた。管理技術者になれと言われ、私で良いものかと悩んだが、石巻に住んで20年になり、『こういう機会こそお前がやるべきだ』と役員に言われて腹を決めた」
 「うれしい半面、責任と使命の重さは図りしれず、非常に緊張した思いがある。地元に期待されていると感じるが、熱い思いを持ちながらも気負うことなく業務を進めていきたい」
--業務内容は? 「石巻市内に22カ所ある一次集積されたがれきを雲雀野埠頭の中間処理のヤードに持ち込んで、粗選別、破砕分別する。その後に再生処理するもの、最終処分に回すもの、焼却するものと、どんどん細かく分けていく。このとき、なるべく石巻地区の中で再生できるものを増やしたい。手間も費用も掛かるが、リサイクルできるものは絶対逃がさないという趣旨で取り組む」

石巻地区には膨大ながれきが山積みになっている。
--運搬の量が膨大だが? 「陸上輸送で大事なことは交通渋滞解消だ。中間処理ヤード前の日本製紙周辺は現在でも渋滞しており、われわれが入ると運搬車両がさらに増えることになる。交通シミュレーションソフトを使い、受け入れる側の能力と渋滞が生じない台数をシミュレーションし、使用台数を400台程度に決めた。交差点に人をつけて状況を把握したり、ダンプ全車両にGPSを載せて、集中管理し、通常の生活に支障を来すような状態は解消したい」
--破砕選別について 「魚網など、今まで破砕したことがないものがかなりあるため、デンマーク製の高性能破砕機を導入する。これまでの実績から、国産のものは長いロープなどがあると巻きついて停止するが、今回採用したM&J社の破砕機は、そうしたものに対し高い能力があると聞いている。一度現場で試験施工したが、かなりのスピードで処理できることが実証された」
 「ただ、がれきの中には鉄板など、いろいろなものが含まれているため、実際にやってみないと分からない面もある。破砕機を使用する前に手選別を行い、鉄や長尺ものなど、処理しづらいものを先に外して、能力を発揮させるようにしたい」
--地元雇用が期待されている 「現在、石巻、東松島、女川の2市1町の中で、休んでいる建設系作業員はゼロに近い。できれば水産加工や、工場が打撃を受けて100%稼働に至っていない製紙会社、製鉄会社などから雇用したい。現在は、来年4月あたりに施設の完全運転を目標としているが、それに合わせて雇用要請に応じていただければありがたい。石巻商工会議所の賛同・協力を得て、個人的に募集するのではなく、企業を通して何人かのパーティーで来ていただけるようお願いしている」
--安全対策について 「これまで、われわれと一緒に仕事をしてきた作業員はいわゆる“職人”と言われるプロ集団だが、今回の場合はそうではないため、完全にすべてをマスターすることはなかなかできない。その中で、(業務委託する)清掃業の企業には、清掃経験のある人を雇い、その人たちにきちんとした教育をしてもらうなど、部分部分に関しては馴れている業種の方に指導してもらいたい。われわれゼネコンはその全体を管理する調整役として力を尽くしていきたい」

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