2011/10/12

妹島、アントン、塚本、藤本、近藤各氏が語る/ベネチア・ビエンナーレを振り返るディスカッション

 イタリア大使館とイタリア文化会館が、UIA関連イベントとしてシンポジウム「日本におけるヴェネツィア・ビエンナーレ:建築家 妹島和世セミナーとパネルディスカッション」を開いた。
 シンポジウムは、昨年イタリアで開かれた「第12回ベネチア・ビエンナーレ国際建築展」を題材に、展覧会の総合ディレクターを務めた妹島氏が、展覧会場で撮影したスライドを使って主な成果や特徴を説明した。
 パネルディスカッションでは同展に出展した建築家、スペインのアントン・ガルシア・アブリル、塚本由晴、藤本壮介、近藤哲雄の4氏も発言した。
 それぞれの発言要旨は以下のとおり。
 塚本氏「ビエンナーレは何回行っても楽しい。毎回感動する。建築事務所としては予算がそれほど出ないので厳しいが、それでも、みんな一生懸命やる。どの国の建築家もあそこまで徹底してできるのは、ベネチアというまちの魅力なのだろうか。日本でこれだけのパワーを引き出すのは大変だ」
 近藤氏「ベネチアは、建築展、アート展、映画祭など1年でいろいろな催しがあって、さまざまな国の人たちが集まる。そして、あちこちで交流が起こって、まちの一体感が生まれている。人々の生き生きした感じが、柔らかな印象として残っている」
 アントン氏「ベネチアは展覧会をやるには『最悪』のところといえる。なぜなら『トンカチ』をするにも規制がありすぎる。しかし、美しさがすべてに勝るというか、美しさが不便さなどすべてを凌駕している。だから、ベネチアはたぐいまれな場所になるのだと思う。アートも建築も映画も、まちから影響を受ける」
 藤本氏「ベネチアは便利なまちではないので、逆にポジティブになれる。いろいろと考え始めるのだ。まちと人の結びつきが強い。人工のものと自然がうまく共存している。東京の路地とべネチアの路地はどこかで通じるものがあると思う。このまちに勝る建築を造ることはできない」
 妹島氏「建築家はあるところでは芸術家でなくてはならないと思う。ビエンナーレでは、環境のこと、子どものことなどを考えて提案しているものも見られた。わたしがテーマに入れたのは公共性。それはみんなが幸せになる空間といってもいい」

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