2011/10/12

ルポ 現場から・2000メートル級の山中で続く排水トンネル工事

2000メートル級の山岳地帯に現場がある
  石川県など4県にまたがり、2000m級の山々が連なる白山。標高約2000mの山岳地帯で、地すべり対策の排水トンネル工事が進められている。施工しているのは飛島建設。現場までのアクセスは徒歩のみ。資機材はヘリコプターで空輸している。施工技術が発達した現在でも、こんな現場がいまだに存在している。
 この工事は、国土交通省北陸地方整備局金沢河川国道事務所が発注した「甚之助谷地すべり対策排水トンネル工事」(石川県白山市)。現場は国立公園特別保護地区内にあり、希少な高山植物などが多く、通常とは比べものにならないほど厳しい自然環境保護対策が求めらていれる。
 天候に左右される資機材搬送、積雪のため年間4・5カ月しかない施工期間、急峻な施工現場、稀少植物の保護といった厳しい施工条件に加え、現場までの登下山、高所での簡素な宿舎生活など多くの苦労が伴う。
 こんなにシビアな工事をなぜ行っているのか。実はこのエリアには地滑りが多発しており、このような高所で大規模は地滑りが起きれば、発生した土石流は平野まで大きな被害を起こす恐れがあるからだ。そこで新たな排水トンネルをつくり、地すべりの原因となる水の流れを変えようとしている。
2時間の登山が必要な事務所で寝泊まりしている職員や作業員は、週末になると下山し、週初めに再び登山道を使って通勤する。飛島建設の片貝所長は「白山の貴重な自然環境に負荷を与えないのはもちろんだが、現場で働く人間にも負荷を与えたくない。山中でのけがはもちろん、狭い宿舎でのストレス対策も重要だ。厳しい施工条件だが、無事故・無災害でやり遂げたい」と意気込む。
資材を運ぶヘリコプター

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