東日本大震災の被災者に「心が安らぐ居間のような、始原の建築を」と、建築家の伊東豊雄氏が提案した集会施設「みんなの家」が仙台市宮城野区の仮設住宅団地内に完成=写真、26日、落成式と仮設住宅の住民による芋煮会が開かれた。
熊本県が、くまもとアートポリスの一環として実施した、初の県外事業となる。芋煮会では地酒も振舞われ、伊東氏も交えて住民や関係者らが夕方までにぎやかに歓談した。
みんなの家は、仙台市の協力を得て、同市宮城野区福田町南1丁目公園地内にある応急仮設住宅団地内に建設された同施設は木造平屋建て約40㎡の規模。伊東氏と、くまともアートポリスアドバイザーを務める桂英昭熊本大准教授、末廣香織九州大准教授、曽我部昌史神奈川大教授の4氏が意匠や構造、家具などを分担して共同設計した。
切妻屋根の軒と縁側のある日本の原風景のような建築で、内部には、まきストーブが置かれ、4畳半の畳の間、長テーブル、キッチン、トイレが配置されている。既設の集会場と渡り廊下でつなげて設置した。
斬新なデザインで建築界をリードする伊東氏がこうした建築を造ったことに驚く人も多かったが、伊東氏は淡々と振り返る。「決めるまでにはかなり逡巡したが、決めてからは楽になった。避難所や仮設住宅での極限状況の中でも人は集まろうとする。このような原初的なコミュニティーに最低限のかたちを与えるのが建築の始まり。人間的に居心地の良い始原的な建築を考えた」という。
住民と笑顔で話す伊東氏に竣工の感想を聞くと、「建築中に訪れた時に住民の期待が高まってくるのが感じられた。先ほど、住民の方がお琴を披露してくださったのを見て、これはうまく使ってくれると確信した」と語った=写真。
26日に開かれた落成式では、「みんなの家」建設推進委員会会長の生田博隆熊本県土木部建築住宅局長と伊東氏があいさつし、稲葉信義仙台市副市長が謝辞を述べた。施工は熊谷組が担当した。
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