速報・台風12号豪雨でインフラの復旧支援へ官民が全力対応
3日から4日にかけて西日本を直撃した台風12号は記録的な豪雨をもたらし、和歌山県、奈良県、三重県を中心に死者・行方不明者100人超という大きな被害が発生した。各地で道路が寸断。依然として停電や断水が続き、インフラ施設の復旧のめどが立っていないところもある中、地元建設企業や自衛隊などの緊急対応や懸命な道路啓開活動が進む。6日には奈良県十津川村出身の前田武志国土交通相を団長とする政府調査団が奈良県内の被災地を視察。同相は国としての支援体制の構築に努める考えを示した。野田佳彦首相も9日に被災県を視察し、被災自治体の首長らから説明を受けた。インフラを担うそれぞれの対応状況を速報する。
TEC-FORCEによる技術指導 |
近畿地方整備局では、被災した3県からの要請を受け、被災状況の調査、復旧方針などの技術的支援・助言のため、緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE=テックフォース)の派遣を4日から開始した。
一方、現地の現状や取り組み状況などリアルタイムの情報を収集する災害対策現地情報連絡員(リエゾン)は、8日までに延べ56人を派遣、排水ポンプ車14台、照明車33台、対策本部車2台、衛星小型画像伝送装置(KU-SAT)8台、衛星通信車5台、路面清掃車2台、散水車2台の計66台も派遣した。
断水している奈良県十津川村には飲料水2500㌔リットルを空輸、北陸地方整備局と中国地方整備局も、照明車20台を派遣している。
河川では、紀南河川国道事務所が、輪中堤が転倒した新宮川水系相野谷川高岡地区(三重県紀宝町)の応急復旧工事として、7日に大型土のうによる築堤を完了。引き続き二重締切による仮設堤防の築堤工事に着手した。このほか、熊野川本川でも3カ所の応急復旧工事を進めている。
また近畿地方整備局、奈良県、和歌山県がそれぞれ協力して道路啓開と道路復旧を行う「道路復旧支援チーム」も発足している。
熊野川に出現した天然ダム |
◆和歌山県/紀南中心に甚大被害/建協会員懸命の作業
和歌山県では、紀南地方を中心に甚大な被害が発生。県は4日に災害対策本部を設置した。
被害は、9日午前7時現在で、死者40人、行方不明者34人、負傷者6人。物的被害は全壊86棟、半壊42棟、一部破損80棟、床上浸水2452棟、床下浸水1630棟、その他雨水被害170カ所が確認されている。
道路は、県と国交省が管理する路線で150カ所が越波や崩土などにより、通行止めとなり、このうち現在までに、79カ所が規制解除となった。県道、市町村道は現在調査中だが、被害が多発している。
河川は、貴志川や真国川、穴伏川などの一級河川で25カ所が護岸決壊や側方浸食などの被害を受けた。二級河川は、65カ所が被災、このうち切目川で5カ所、総延べ450mが破堤した。
応急・復旧に当たっては、県の各振興局建設部から、災害協定を結んでいる和歌山県建設業協会の伊都、有田、日高、串本、新宮、紀南の6支部に支援要請。各支部の会員企業が被災個所の応急・復旧作業を続けている。
落橋した折立橋 |
奈良県では記録的な豪雨により約4700世帯、約1万人に避難勧告が出され、人的被害は9日午前10時現在で死者6人、不明者19人にのぼった。
特に南部地域では、十津川村で村営住宅2棟が熊野川の濁流に襲われて倒壊するなど、甚大な被害に見舞われた。同村では、道路・通信網が遮断され、停電も起こるなどライフラインを断たれ孤立した。
特に国道168号と169号の寸断は復旧や救援に大きな影響を与えた。国道169号では西谷橋(川上村迫)が崩土で決壊し、五條市と十津川村をつないでいる国道168号は折立橋(十津川村折立)が落橋したほか、天辻トンネル~県境にかけて崩土などで通行止めを余儀なくされた。
8日には土砂崩れで通行できなくなった国道168号の迂回路がいったん開通したものの、9日に通行止めとなり、現在は168号本線を自衛隊などの車両に限って通行できる状況だ。
県は今回の被害を受け、県建設業協会と測量設計業協会に防災協定に基づく災害時の緊急対応を要請した。業務内容は国道や県道上の落石・土砂の撤去、迂回路の整備、測量など。
同協会各支部が、五條、吉野土木事務所から応急復旧工事などの要請を受けて出動する形となる。
◆大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県/大阪府下は被害少
兵庫県下では高砂市を中心に約2万4500世帯、約6万9000人に避難勧告が出され、床上浸水約1200件、床下浸水約3700件の住家被害があった。
道路については、県管理道路の118カ所で崩土、路肩崩壊といった被害があった。8日午後3時時点では全面通行止めが9カ所、片側通行規制が9カ所となっている。
大阪府下では、軽傷者2人、床下浸水1件などと被害は少なく、被災した道路もすべて応急復旧済みとなっている。京都府下は、人的被害が負傷者7人、住家などの被害9件。一部道路で通行止めは続いている。滋賀県は人的被害が負傷者8人、住家被害が4件、道路の損傷が32カ所となっている。
ずれが生じた紀ノ川橋梁 |
西日本旅客鉄道(JR西日本)では紀勢本線紀伊天満駅~那智駅間にある那智川橋梁の構造物が流失したほか、紀伊日置駅付近の紀伊日置変電所の冠水、下里駅~紀伊浦神駅間の江川橋梁で石積みが一部流出するなどの被害が出た。同社は「調査中で全容が分かっていない」と工事着手の時期などは未定としているが、できるだけ早期に復旧計画をまとめ公表する考えだ。
大きな被害となった那智川橋梁は長さが約40m。橋脚2基のほか、橋桁も流失し、軌道は川に落ち込んでいる状況にある。また河川護岸も損壊していることから「和歌山県とも協力し、一体的な整備が必要になる」とみている。
一方、南海電鉄でも高野線の橋本駅~紀伊清水駅間にある紀ノ川橋梁で橋脚や線路にゆがみが生じており、対応策を検討する。対応方針は現時点で未定。
紀ノ川橋梁では、橋脚のうち1基が東側に最大60mm、線路も最大で12mmずれが生じている被害が発生している。ずれは川の上流側で発生しており、土台部分が台風で増水した川の水流や流下した岩石などによって深く削られたために橋脚や軌道が傾いたとみている。
土台の調査は紀ノ川の水位が下がるのを待ってから着手する。
◆関西電力/20万軒近くが停電復旧に全力挙げる
関西電力でも、停電の復旧に全力を挙げている。台風による管内の総停電軒数は20万軒に迫り、和歌山県の11万2560軒(7日時点)を筆頭に、奈良県の2万8590軒、兵庫県の1万0080軒、滋賀県の8530軒、大阪府の8130軒などと続く。未復旧の地域は9日午前9時現在で、和歌山県では田辺市や那智勝浦町など1800軒、三重県では熊野市や紀宝町など2050軒、奈良県では五條市や十津川村など710軒となっている。
NTTの復旧作業 |
和歌山、奈良、兵庫の各支店管内で被害が発生。和歌山では約3万4000回線が故障し、現在は400人体制で点検・確認や復旧作業を実施している。9日時点で未回復数は9040回線となっている。奈良では影響を受けた約4570回線のうち、280回線が未回復(9日時点)となっている。
また、同社は和歌山県や奈良県で特設公衆電話を設置するとともに、衛星携帯電話も提供している。
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