土木学会など6学会の東北支部と東北建設協会でつくる「東日本大震災に関する東北支部学術合同調査委員会」(委員長・真野明東北大大学院教授)は2日、仙台市青葉区のウェスティンホテル仙台で、第3次報告会を開いた。被災自治体が策定作業を進めている復興計画を技術的にサポートしようと、「多重防御」と「がれき処理」「まちづくり」の3テーマについて、研究者らが最新の調査結果などを報告した。
「多重防御」について東北大大学院の今村文彦教授は、仙台平野を例に挙げ、“いぐね”と呼ばれる屋敷林や、伊達政宗の命によって開削された貞山運河が津波第一波の到達時間を遅らせたほか、エネルギーを減衰させたことを説明し、「400年続いたこのシステムをもう一度見直して、多重防御策を考えていく必要がある」と提起した。
一方、“万里の長城”と呼ばれた岩手県宮古市田老町の防潮堤が破壊された原因について「最初はL字型で建設されたが、戦後の宅地開発に伴い、防潮堤が増築されてX字型になった。L字型では津波を東西に分けることができたが、X型になったことですべてのエネルギーが集中してしまった」と指摘した。
同じく越村俊一准教授は、パシフィックコンサルタンツやIBMなどと共同開発した津波数値シミュレーションによる仙台市沿岸部の多重防御案の影響を説明した。
それよると、県道塩釜・亘理線を現在より6m、海岸堤防は6.2m、防潮堤は4.4mそれぞれかさ上げした場合、県道西側の浸水面積は大幅に減少するものの、県道の盛土の反射波によって東側の浸水深が上昇する。
越村氏は「多重防御策はシミュレーションで一つひとつチェックしなければ、全体としての効果が分からない。効果の尺度をつくりながら、被害を最小化できる多重防御を考えていく必要がある」とした。
「まちづくり」では、相羽康郎東北芸工大教授が、被災自治体がまとめている復興計画について「安全のみを優先するのではなく、総合的なまちづくりの視点が必要。徒歩や自転車によるコンパクトな生活圏ネットワーク、生活サービス水準を確保した分散型居住地区などの構築とともに、産業振興を主体的に仕組んでいくことが大切だ」と強調した。
田中礼治東北工大教授は、今回の大震災でピロティ式の住宅の被害がほとんどなかったことを踏まえ、「津波の浸水深が4m未満だった地域では、ピロティ式の住宅を習慣付けるべきだ」と指摘。その理由として「津波の翌日から日常生活ができ、居住権の保全も可能。復旧費も最も安い」とした。
一方、浸水深4m以上の地域には、RC構造物の採用を提言。その際も「1階部分はピロティが望ましい」と述べた。
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