2011/09/12

日本海水がゼオライトの10倍の能力持つ「セシウム吸着剤」開発

フロシアン化鉄の拡大写真
 放射性物質の汚染対策が急がれる中で、日本海水(東京都中央区)は海水や土壌の中に含まれる放射性セシウムを効率よく回収する吸着剤を開発した。原料のフロシアン化鉄を高分子化合物に付着させた粒状としたもので、海水中のセシウム除去剤として福島第一原子力発電所での活用が見込まれている。並行して土壌対策への活用についても具体的な検討を始めた。
 震災後1カ月かけて開発した吸着剤は、水の中に含まれるセシウムを効率よく回収できるように、粉末状の原料を0・7mmの粒状にした。粒の中はスポンジ状であるため、ろ過する原理で汚染水を浸透させ、粒の中にセシウムを閉じこめやすくする。福島原発で使われている吸着剤ゼオライトに比べ、約10倍の吸着能力がある点が特徴だ。
 同社は、開発後すぐに電力会社や原子炉メーカー、研究機関など約10社にサンプルを配布した。セシウムの除去効果は安全基準値の10分の1まで除去できる性能があり、複数の社から吸着剤としての高い評価を得ている。環境営業部の四元利夫部長は「土に含まれている放射性セシウムを水に移し変えることができれば、有効な土壌の除去剤としても効果が期待できる」と強調する。同社はすでに、あるゼネコンと具体的な検討に着手しているという。

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