東日本大震災で被害を受けた岩手県からの応援要請に基づき、東京都から派遣されている技術職員が公共土木施設の復旧事業に従事、奮闘している。通常業務とは異なる環境下において短期間で業務を遂行しなければならないなか、被災状況の現地調査から復旧範囲の決定、査定設計書の作成、災害査定にかかる国庫負担の申請や認定といった復旧事業の一連の業務を限られた人員でこなしている。
現在、都から同県釜石地区に派遣されている職員は建設局4人、都市整備局2人の計6人。9月からは第2陣の技術職員が派遣される予定だ。
6月から第1陣として被災地に赴いている派遣職員6人のうち、新潟県中越地震など、過去の震災でも復旧事業に携わった経験を持つ佐藤鉄氏(建設局西多摩建設事務所奥多摩工区長)は「あれだけの大災害に世界中から注目を浴びるなかで復旧事業に専門家として派遣されているプライドがある」と力を込める。
だが、初めて現地を視察した際には災害復旧の原則である原形復旧を求められる中で「これだけ壊滅的な状況にあって、一体、何を復旧すればいいのか」と、その惨状に目を疑ったという。地元からの大きな期待を背負いプレッシャーがかかる場面も多いが「壊滅した街並みが5年後、10年後にきれいに整備された姿を見ることができれば、行政マンとしてではなく、土木屋としての冥利に尽きるのではないか」との気概を示す。
また一方で「まだ親族の遺体が見つからないといった現実の生々しい話も聞く。通常の業務とは違う精神的な難しさがある」とも。
東日本大震災の発災後、被災地への職員派遣に早くから準備態勢を整えた東京都だが、佐藤氏は「災害査定の経験や知識を持った職員を、もっと積極的に活用することができるのではないか」と話す。
特に都建設局は、優れた技術力を局全体で共有・活用するために創設した『建設技術マイスター制度(指導技術者制度)』など、災害時にこそ有効に活用すべき制度を備えている。
高度防災都市の実現を掲げる都としても、年々、減少傾向にある技術職員の技術継承も視野に入れながら、派遣職員の被災地での経験をいかにしてフィードバックしていくか。被災地支援にとどまらず、都の防災力を高める上でも今後の大きな課題になる。
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