2011/09/21

トンネル工事で排水濁度10分の1以下/ホタルに配慮、保存会と連携/戸田建設

 戸田建設は、山梨県身延町のトンネル工事で、ホタルの育成保全に向けた取り組みを展開している。この現場は、国土交通省関東地方整備局が発注した中部横断自動車道醍醐山トンネル工事。トンネル坑口付近を流れる一色川には天然のホタルが数多く生息し、総合評価方式による入札では、「ホタルの生息環境に対する配慮」という審査項目が盛り込まれた。身延町一色地区は、ホタルの自然繁殖数が関東随一といわれ、飛翔期には多くの観光客が訪れるなど、ホタルが貴重な地域資源となっている。
 トンネル工事現場からは多くの排水が出るが、戸田建設は新開発の「TSフィルターろ過装置」を初適用した濁水処理システムによって、一色川の水質よりも濁度の低い排水処理を実現した。通常の排水基準は浮遊物質量(SS)25ppmだが、一色川の濁度は約5ppm、この現場からの排水はさらに低い2ppm以下だ。現場に併設された濁水処理システムは、24時間で約1600tもの濁水を処理する。一方、トンネルから湧き出る濁度の低い清水はリユースするなど、あらゆる水の管理を徹底している。
 ホタルの育成保全に向けた取り組みは、排水処理だけではない。地元住民らで構成する身延町一色ホタル保存会(近藤義長会長)と一体となってさまざまな活動を展開している。例えば、川沿いに生えるアシやススキなどの草刈りもその一つ。一方、ホタルの飛翔期には、作業所や各世帯から漏れ出る光を遮断する膜「寒冷紗」も設置している。保存会の依田克己名誉会長は「われわれの地域やホタルに対する理解と配慮があり、非常にありがたい」と話す。
 現場付近は大型トラックなどが頻繁に通過するが、幹線道路から一本入った道では時速30㎞、集落付近では20㎞まで速度を落とすよう徹底している。各世帯への振動対策であり、ホタルへの配慮でもある。
 こうしたさまざまな取り組みを踏まえ保存会は昨年10月、同社に感謝状を贈ることを全会一致で決めた。一方、社内でもこの活動は高い評価を受け、ことし7月には戸田地球環境賞を受賞している。
 戸田建設の松田正仁作業所長は「地元の皆さんの理解があるからこそ、われわれは仕事ができる。すべての作業員に対して、こうした意識を持ち、濁水管理なども含めて地域に配慮するよう周知徹底している」と話している。

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