2011/09/09

東京都市大学OB、OGが仮設住宅で「ソラノキャンパスプロジェクト」

 宮城県東松島市のひびき工業団地内に建ち並ぶ約300戸の仮設住宅。被災地の一部には、木材の多用や玄関の対面配置といったアイデア仮設住宅も完成しているが、ここにあるのは標準仕様のプレハブ住宅群だ。「仮設=住みにくい」という現実を少しでも改善し、コミュニティーの醸成に役立てようと、東京都市大学(旧武蔵工業大学)OB・OGの建築家ら有志が、『ソラノキャンパスプロジェクト』を始動した。
 前見文徳(前見建築計画代表)、基真由美(M・A・D代表)の両氏が主導するこのプロジェクトは、住棟間の共用通路上部に、オーニングと呼ばれる可動式の日よけテントを張る。建築物の熱負荷軽減はもとより、住民が集える場をつくることが最大の目的だ。
 自らの実家が被災した前見さんは、「初めはなかなか動けず、迷うこともあったが、家族への支援をさらに広げていければ」と立ち上がった。
 8月7日、地元NPOや大手テントメーカーの太陽工業などの協力を得ながら、第1区画内の32戸16レーンで、デモンストレーションを行った。住棟間をテントでつなぐには、両棟住民の了解がいるため、そこには必然的にコミュニケーションが生まれる。閑散とした通路に誕生した半屋外的で開かれた空間は、ともすれば引きこもりになりがちな人の足をも誘い、新たな交流を生み出すきっかけにもなりえる。
 この取り組みで注目すべきことは、各地に大量供給された仮設住宅のすべてに適用できる点だ。住宅部分の既存ボルトに、キット化された器具を取り付けるだけなので、材料さえそろえば簡単に作れる。
 9月4日には、10人ほどの子どもたちが集まり、無地のテントに絵を描くイベントも開催された。基さんは「住民の方から『家を新築した時にこの絵を飾りたい』と言われたことが一番うれしかった」と語り、子どもたちの絵がたなびく空を見上げる住民の姿に希望を感じたという。
 今後も「冬季に向けて、玄関部分の風除室の設置支援などを考えている」(前見さん)と、震災前の「日常」を取り戻すために、建築が“今できること”の試行錯誤は続く。

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