インターネット上でデータやソフトを効率的に運用する「クラウドコンピューティング」が建設業の間に広がってきた。ゼネコンは自ら使うシステムをクラウド化して効率を高めるとともに、外部に提供するサービスでもクラウド技術を使い、利用者の利便性を向上させる。クラウド市場は急速に拡大しており、建設業でも多様なソフトに対して、さらに活用が拡大する可能性が高い。
日本電気(NEC)、東急建設、竹中土木、日本国土開発、TSUCHIYAは、建設業界を対象にした基幹業務クラウドサービスの企画で協業し、同サービスの販売活動を2010年10月から始めた。従来の個別システムに比べてコストを約3割削減できる。
鹿島と日立製作所は、流体解析システムに日本で初めてクラウドサービスを導入した。これにより、計算速度が6倍になったほか、コストも従来に比べて4割減る見込み。今回の成果を見ながら、構造計算などにもクラウド導入を広げていきたい考えだ。
竹中工務店は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業で、異なるメーカーの空調や照明を統合的に制御し、快適性を保ちながらエネルギー消費を最少化する技術を開発。日本IBMは経済産業省による事業の一環として、地域エネルギーマネジメントシステムを開発した。クラウド上の地域共通プラットフォームによって、行政や企業、住宅など複数地域の多様な主体が消費するエネルギーを一元的に管理する仕組み。両社はこの2つの技術を融合させて実物件に適用した。
大林組はクラウドコンピューティング環境を活用したBIMの導入を強化する。「スマートBIMクラウド」を13年上期に構築するための提携を、NEC、ハンガリーのグラフィソフト社と結んだ。設計施工案件を対象に、スマートBIMクラウドを構築し、業務の前倒し化や生産性の効率化につなげる。同社はこのほか、建物保有者を対象にクラウドを利用したウェブ版省エネ支援サービス「らくエコ」も開発している。
クラウドの市場規模については、IT専門調査会社IDC Japan(本社・東京都千代田区、竹内正人代表)がことし4月、国内クラウドコンピューティング向けソフトウエア市場予測を発表した。国内パブリッククラウド向けソフトウエア市場は、10-15年の年間平均成長率は19.0%で、15年に2255億円に達すると予測する。一方、国内プライベートクラウド向けソフトウエア市場は2707億円になると見ている。
国内クラウドコンピューティング向けソフトウェア市場予測(IDC Japan調査) |
0 コメント :
コメントを投稿