2011/09/30

風格ある首都東京の“顔”/東京駅丸の内駅舎保存・復原

 東日本旅客鉄道(JR東日本)が2007年5月に着工した国指定重要文化財「東京駅丸の内駅舎」の保存・復原工事が、1年後の全面開業に向け終盤に差し掛かっている。現在の工事進捗率は約70%で地下、地上とも躯体工事は完了。施工する鹿島・清水建設・鉄建JV(金丸康男所長)は、1日約700人を動員し、外壁や内装、設備工事などを進めている。12年3月には周囲のカバーが除かれ、辰野金吾が設計した当時の姿がお目見えする予定だ。
 1914年に完成した駅舎は、赤レンガを多用した荘厳なデザインで、首都東京のシンボルとして親しまれてきた。45年の戦災で屋根と内装の大半を消失したが、わずか2年で復興工事が行われ、2階建て駅舎として再建された。
 JR東日本が28日に報道公開した今回の工事では、現存する1、2階部分のレンガ躯体・外壁などを保存するとともに、南北のドーム部を始め、失われた上層階を復原し創建時の外観に戻す。
 復原部分の外壁には約40万枚の化粧レンガを使用。保存部分の色と合わせるため、原料調合や焼く温度設定の試行錯誤を繰り返した。柱や飾りは花崗岩、擬石を用いて直す。屋根には天然スレートを敷き詰め、銅板で装飾を施す。
 直径約20m、8面体のドーム内部の工事も着々と進行している。天井には当時の写真や記録文書などから、デザインや大きさを割り出したレリーフ、彫刻を散りばめ、重厚さを演出する。中には、豊臣秀吉の兜や干支など日本的なモチーフの装飾も見られ、これは辰野本人の意思によるものだという。地震対策にも万全を期している。新設した地下エリアと駅舎の間には、352台もの免震ゴムを設置。さらに158台のオイルダンパーと連動させることで、構造体の揺れを制御し、隣接する高架橋への接触を防ぐ。
 工事完了後の施設規模は、鉄骨レンガ・RC・S・SRC造地下2階地上3階一部4階建て延べ約4万3000㎡となる。駅施設のほか、ハイグレードなホテルや機能拡充したギャラリーなどで構成。これまで使われていなかった中央部の屋根裏空間は、ガラス張りのホテルラウンジに生まれ変わる。総工費は500億円程度。駅施設は12年6月に一部供用し、同10月にグランドオープンを迎える。

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