2011/08/19

川向正人東京理科大教授らが99回目の「建築家フォーラム」

 建築家の相互交流を目的にした建築家フォーラム(代表幹事・古谷誠章早大教授)の99回目が開かれた。今回のテーマは、運営幹事らによる「幹・監事が語るmy design・my concept・my topics」。
 フォーラムには、代表幹事の古谷教授のほか、幹事の川向正人東京理科大教授、国広ジョージ国士舘大教授、監事(監査役)の可児才介元大成建設設計本部長(現可児アトリエ主宰)、森暢郎山下設計会長が参加。今川憲英東京電機大教授がモデレーターを務めた。
 古谷氏は、大震災の仮設住宅について「既存のコミュニティーの中に冗長性があれば、仮設住宅はいらないと思った。われわれの生活の中にそういうシステムをつくっておくべきではないか」という。
 川向氏は、研究室の学生といっしょに5年間続けてきた「東京理科大学・小布施町まちづくり研究所」の活動に触れて、「修景という景観の修復は医療で言うとケアに当たる。日々の手入れを続けてきたといえる」と話した。
 国広氏は「建築的政治活動」という言葉を持ち出して「建築を学んだ人がもっと政治家になってもらいたい。建築の枠の中に閉じこもらず、幅広い活動を通して建築の枠を超えた時、一般市民にも理解をしてもらえるのではないか」と指摘した。
 可児氏は「ほかの設計事務所とチームを組んで仕事をしたのはおもしろかった。うまくいくと感動を覚えるものだ。ゼネコンであっても設計と施工の役割分担をはっきりとするべきだと言い続けてきた」と述べた。
 森氏は「これからは官公庁の仕事は変わってくるのではないか。古谷さんのように地道なワークショップを続けることで合意形成をすることが重要になってくる。わたし自身は発注者、市民などとの合意形成がとても大事であることを身をもって体験させてもらった。建築とはそういうものだと思う」と強調した。
 構造家である今川氏は開発中の新しい構造体を紹介。「建築を物理から化学へ」と発想の転換を訴えた。新構造体は、二酸化ケイ砂(SiO2)にCO2を注入してできる「炭化ケイ砂(SiC)」。化学反応でできた「自立する砂」の構造体は、CO2を使うことで地球環境にも貢献している。建築への姿勢として「実現するまで後ろを見ない」とも話し、そのために見合うコストを施主に理解してもらう重要性も指摘した。

Related Posts:

  • 11月6日までGA galleryで「安藤忠雄建築展」 東京都渋谷区の「GA gallery」は、「アジアでのプロジェクト」と「時間とともに成長する建築」の2つをテーマに「安藤忠雄建築展」を開いている=写真。  安藤氏が海外での仕事を始めたのが欧米を中心とする1990年代だが、2000年代に中国などアジアに集中。安藤氏は「アジアであるがゆえに共通部分も多いが、差異がより意識される。その文脈を理解して建築を造るのは骨が折れるが、私なりに『場所と建築の対話』を考え取り組んでいる」としている。「成長する建… Read More
  • 伊東豊雄氏の「みんなの家」で芋煮会  東日本大震災の被災者に「心が安らぐ居間のような、始原の建築を」と、建築家の伊東豊雄氏が提案した集会施設「みんなの家」が仙台市宮城野区の仮設住宅団地内に完成=写真、26日、落成式と仮設住宅の住民による芋煮会が開かれた。 熊本県が、くまもとアートポリスの一環として実施した、初の県外事業となる。芋煮会では地酒も振舞われ、伊東氏も交えて住民や関係者らが夕方までにぎやかに歓談した。 みんなの家は、仙台市の協力を得て、同市宮城野区福田町南1丁目… Read More
  • 最優秀に青木淳建築計画事務所/広島・三次市民ホールプロポーザル  広島県三次市が実施した(仮称)市民ホール建設設計業務の公募型プロポーザルで最優秀提案に特定された、青木淳建築計画事務所の提案概要と審査講評が明らかになった。  青木事務所は、「市民がにぎわう、市民が主役の、文化の街角“小さな街”」「“表”と“裏”の区分けを流動的にする、基本骨格としての回廊」をテーマに提案を作成した。  空間的なアプローチとして、「いつ行っても、いろんな場所でいろんなことが行われていて、それに参加したくなる空間。いつでも音楽や… Read More
  • 山梨県建築文化賞に「山中湖楓深庵」と「OLD→NEW Project」 「山中湖楓深庵」撮影:松村芳治   2011年度山梨県建築文化賞の受賞作品が決まった。建築文化賞には『山中湖楓深庵』と『OLD→NEW Project』が選ばれた。表彰式は11日にベルクラシック甲府(甲府市)で開く。  同賞は、景観と機能などに優れた建築物の表彰を通して、建築文化の高揚や魅力と風格のある文化的で快適なまちづくりを推進するため、山梨県や山梨県建設業協会などで構成する山梨県建築文化賞推進協議会が90年から実施している。… Read More
  • 横浜という都市について朝まで議論/ヨコハマ研究会が書籍発刊でパーティ 「これからどうなる?ヨコハマ研究会」が、書籍『これからどうなるヨコハマ』を発刊した。同研究会は、横浜の身近にありながら議論できていない都市の具体的なテーマを探るため、2011年に発足。横浜・馬車道の「BankART School」で展開した議論をまとめ、書籍として出版したものだ。  書籍の出版にあわせて21日、横浜トリエンナーレの特別連携プログラム「新・港村」の会場で出版記念パーティーも開いた。  パーティーでは、佐々木龍郎佐々木設計事務所代表… Read More

0 コメント :

コメントを投稿