2011/08/18

築38年の老人ホームがモダン建築に/青木茂建築工房が下関の満珠荘をリファイン


 青木茂建築工房(青木茂主宰)が設計を手掛けている満珠荘大規模改修工事リファイニングプロジェクトの現場見学会が10日、山口県下関市の現地で開かれた。「すばらしいロケーションに位置し、室内からの眺望を最大限生かすことを目標とした」(青木氏)というように、ブレースなどで視界を遮らない耐震補強を進めている。
 満珠荘は、下関市が運営する老人ホーム。建設後38年を経過し、老朽化が進むとともに、アスベストの含有が判明し、2007年から休業している。新築ではなく、リファイニングを採用することでCO2や産業廃棄物などの排出低減にも貢献している。この日は、行政関係者や建設業者ら約50人が参加し、解体終了後の耐震補強の様子を見学した。
 耐震補強は、既存の雑壁を解体し、RC耐震壁を新・増設することで強度を確保した。長辺方向の補強は、南側は地下1階部分だけの補強にとどめ、眺望を確保し、建物の魅力を向上させている。施設プランでも、地下1階を壁の多い宿泊エリア、1階を比較的壁の少ない浴場エリア、最上階の2階を大空間ラウンジ・食堂とし、立面的にバランスの取れた構造を実現した。
 南側の開口部はガラス張りとする計画で、庇を設けることで日射の負荷を軽減するほか、北側屋上にトップライトと換気窓を設け、採光、自然通風による環境性能の向上を図る。このほか、メンテナンス性、ユニバーサルデザインに配慮し、外壁にも耐候性の高い材料を使用するなど長寿命化を図る。また、経年劣化など約600カ所に及ぶ補修工事は、すべて記録して建物の履歴として後世の改修工事などに生かす。
 青木氏は、「古い建物は躯体は大丈夫でも機能が古くなり、解体されてしまう。使える機能を持たせることで建物は再生できる」と述べ、リファイニングによるストック再生に意欲を見せた。
 満珠荘の規模は、RC・S造地下1階地上2階建て延べ1831㎡。建築設計は青木茂建築工房、構造設計は金箱構造設計事務所、設備設計はEE設計が担当した。施工は長野工務店・永山建設JV(建築)、山陽電工(電気)、空調サービス(空調)、新ホーム・日環特殊JV(給排水)が担当、12月の完成を目指している。建設地は下関市みもすそ川町3-75。

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