2011/08/03

石岡市立やさと中央保育所/横須賀満夫建築設計事務所

 2010年4月にオープンした石岡市立やさと中央保育所は、筑波山の山並みを建築に取り入れた。筑波山のすそ野に広がる茨城県石岡市柿岡地区に建築されたこの保育所は、廊下を街道に見立てて両側に宿場があるように部屋を配置し、廊下の先には筑波山が見えるようにした。柿岡地区は、宿場町としても栄えた地区で、園児に原風景、街並みを感じてもらおうと考えてのデザインだ。
 温もりを感じてもらうため、材料には県産材を全面的に採用、構造的には大断面の梁だけでも良かったが、木構造をより意識できるよう梁を支える方杖もそのままの表しとして設けた。
 外観も、筑波山の山並みを連続して取り入れ、建物自体もゆるやかなカーブを描いている。またそのカーブが、職員室から園庭や廊下まで見渡せる管理面でも優れたレイアウトとなった。
 隣には高齢者施設や小学校、寺院などがある。設計を担当した横須賀満夫建築設計事務所(水戸市)の菊地茂光氏は「単に保育所をつくるだけでなく、高齢者、小学生との異世代交流を促すよう周囲の施設との連携を考えた」という。小学校側には玄関、高齢者施設側には中庭を設けるなど工夫している。
 園児が保育室を通らずに直接、園庭と廊下を行き来できる“トンネルみち”も設け、昨年夏にはお化け屋敷としても使われた。室内外の変化に富んだ空間に子どもたちの歓声は絶えない。

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