2012/11/21

【BIM現場最前線】現場で検証するBIM効果! 新宿労働総合庁舎

現在の現場
国土交通省官庁営繕部がBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)導入の試行プロジェクトに指定した「新宿労働総合庁舎」。建築の施工を担当する東洋建設の松本大石所長は「現場目線からBIM活用の有効性を検証したい」と意気込みを語る。現場では地下工事が間もなく完了し、年内には地上躯体のコンクリート打設が始まる。既に設備工事の施工図データを取り込み、基準階の干渉チェックを行っており、「通常の現場運営より前倒しで物事が進む」とBIMの手応えをつかんでいる。

◇着工前に施工図から干渉チェック

現況にモデルを重ねることもできる
「BIMと現実の相違を気にしながら、設計者とは慎重に色決めを行っている」と、松本所長は説明する。設計段階では梓設計が3次元モデルによる本格的なBIMを展開し、設計プランは3次元モデルの仮想空間を使って、通常よりも細かな部分まで発注者と入念に打ち合わせしてきた。「発注者が従来よりも強いイメージを持っているため、われわれ現場がそのイメージを忠実に再現できるかが問われている」
 現場関係者との打ち合わせでも、BIMデータを積極的に活用中だ。可視化された設計プランを自由に体感できるウォークスルーツール『aun Walker』(エイ・ユーエヌ)を、協力会社とのイメージ共有に使っているほか、発注者への現場説明ツールとしても有効活用している。「せっかくの貴重なBIMデータを施工段階にも、大いに利用したい」との思いからだ。
 機械設備担当の大成設備と、電気設備担当のタツヲ電気とは、施工図作成のデータ連携も試みた。設備データを建築データの中に取り込み、構造部分との干渉を事前にチェックした。「設計段階からBIMを導入していたこともあり、現場の手戻りになる大きな干渉部分はなかった。細かな部分のレベル差に多少の違いが見られたが、すべて施工時の調整で対応できる程度」と明かす。

◇課題となったIFCフォーマット

BIMによる完成予想
試行の条件として、データ連携の標準フォーマットであるIFC形式の活用が課題の1つに位置付けられていた。円滑なデータ連携を実現するため、システム環境の構築に向けて自主的にCADソフトのデータ互換性も検証した。「使用ソフトの選定も含め、最適な環境を発注者側にも報告した」
 具体的には、建築担当の同社は『Revit』(オートデスク)、設備担当は『CADWe'll Tfas』(ダイテック)を使い、IFC形式でデータを相互に連携し、干渉チェックを『Navisworks』(オートデスク)で検証する仕組みとした。「設備情報とリンクした3次元モデルを使えば、建物完成後のメンテナンスにも有効利用できるはず」と強調する。
 現場の進捗は、地下工事の完了段階で約4割に達する。「現場の施工手順は従来とまったく変わらない。大きく違うのは施工図作成の手順の部分で、通常よりも早く、工事に着手する前までには大まかな干渉チェックを確認した」。現場を支えるプロジェクトチーム体制も整えた。社内では設計部設計課課長の前田哲哉氏がBIM関連の技術的な部分を支援、現場では監理技術者の小原正吉氏をBIM担当に任命した。データ連携などBIM専門家としてビム・アーキテクツ代表の山際東氏にも協力を求めた。
 建設地は、JR山手線沿いにある。「電車からの視線を気にして、建物外観がデザインされている。裏返せば山手線から現場が見られているということ。現場職員には常に緊張感を持つよう促している。国交省初の試行現場ではあるが、無理をせず、身の丈に合ったBIMを実践していきたい」
◇概要
 ▽規模=RC造地下1階地上6階建て延べ約3500㎡▽設計=梓設計▽施工=建築・東洋建設、機械設備・大成設備、電気設備・タツヲ電気▽建設地=新宿区百人町4-4-1
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2012年11月21日10面

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