2015/09/14

【国宝】竹中工務店JVが富岡製糸場保存修理の初弾工事

竹中工務店・タルヤ建設JVが施工する、富岡製糸場(群馬県富岡市)にある国宝「西置繭所」の保存修理工事が佳境を迎える。風雨などから建物を守る素屋根工事の最終工区が10月中に完了予定で、その後調査解体作業を本格化させる。富岡市が今後30年かけて行う、富岡製糸場全施設の保存修理工事の初弾となる工事だ。


トラベリング工法

 素屋根の施工に当たっては、軽量トラスなどで組み立てた大架構をスライドさせていく「トラベリング工法」を採用した。富岡製糸場は世界遺産に指定されているため、周囲の工作物や地盤の移動・掘削ができず、史跡の損傷を避けるため揚重作業を最小限にとどめる必要がある。そのため、クレーン作業の行える場所で架構を1ブロックずつ組み立て、送り出す工法で行う。最終工区である3工区では、1日5.4mずつ送り出している。

遺産を守る心

 竹中工務店の石塚正一作業所長は「作業に携わる一人ひとりの思いが遺産を傷つけないために一番重要だ」と話す。近隣への影響にも配慮し、「作業車両は、地域住民に説明した上で時間を決めて出入りしている。富岡製糸場を訪れた観光客にも工事が見学できるように、仮囲いを外から見えるものにしている」と通常の解体工事とは異なる工夫を凝らす。
 同社では、歴史的に重要な建造物の工事に当たる前に研修できる制度があり、「会社として持つノウハウを生かして、仮設・解体以降の工事にも携わりたいと考えている」と今後の受注にも意欲を見せた。
 「重要文化財旧富岡製糸場西置繭所保存修理(仮設・解体)工事」は、素屋根工事と老朽化した屋根瓦や木製建具など内装材の解体と調査を行う。設計・監理は文化財建造物保存技術協会。工期は2016年9月まで。終了後、市は耐震補強と修理工事の入札公告を予定している。

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