東日本高等学校土木教育研究会(会長・國馬隆史千葉県立千葉工業高校校長)が、さいたま市のホテルブリランテ武蔵野で開催した総会と研究協議会で、「せっかく土木に来たのに…」をテーマにしたパネルディスカッションを開いた=写真。昨年実施した各校アンケートで、土木を学んだ生徒の土木系企業への就職、進学が少ないことが分かったため、土木系企業への就職、進学率が高い2校の教諭から、実践していることを聞いた。パネリストからは「就職者数が少ないのは求人がないから」との指摘があったほか、求人を増やすため「現場見学会では、生徒に必ず質問をさせ、学校を企業側に認識してもらうようにしている」といった取り組みが紹介された。
ディスカッションでは、司会を埼玉県立川越工業高校の加藤久佳校長、パネリストを秋田県立秋田工業高校の村上政基教諭、岐阜県立岐阜工業高校の簑島尚信教諭、埼玉県立熊谷工業高校の奥山新吾教諭が務めた。
最初に奥山教諭が、昨年の総会・研究協議会(静岡大会)で実施した卒業生進路アンケートの結果を披露。「北海道(7校)地区では、土木系企業へ就職、進学をしたのは40%で、残りの60%は、土木とは関係のない企業へ就職あるいは進学をしている。
東北(秋田工業を除く6校)では50%、関東(15校)も北海道と同様の傾向、東海(岐阜工業を除く7校)では、年によっては50%を超えたり40%程度の時がある。北信越(4校)は50%を下回っている」「埼玉県もかなり低い。土木に進む、より良い生徒を育てるのが(工業高校で土木を教える者の)使命ではないか」と現状の問題を提起。テーマを「せっかく土木に来たのに…」としたことの背景を説明した。
次に話題として取り上げたのは、進学してもらうために、中学生に対してどのような学校説明会・体験会を実施しているかということ。村上教諭は中学3年生を対象に、9月初旬にすべての学科で体験入学を実施し、約500人が参加していること、体験学習としてトータルステーションを使って三角形の面積を出させたり、ブレーカーを使ってコンクリートを破壊することを、在校3年生が指導して実施していること、中学2年生には学校見学会で測量実習を見学させていることを紹介した。
◇復興に役立ちたい
また、入学した1年生に、なぜ土木を選んだかという感想を聞いたところ、「実習にまじめに取り組んでいる姿がかっこよかった」「社会に役立つ」「家業の影響」「東日本大震災からの復興に役立ちたい」という回答が寄せられたという。
簑島教諭は「2013年は定員40人に対して、受験生が57人だった」ことを示した上で、「10年前までは、誰も行きたくない学校だったが、いまは誰もが行きたがる学校になった」と述べ、そのために「レベルアップを図るように地道な努力を積み重ねてきた。また、企業や地元建設業協会に対し、学校の存在をアピールしてきた」こと、「工業高校は中学生にとって荒い、怖いといったイメージがあり、生徒や父兄に良いイメージを持ってもらう必要がある。そのため、やさしいイケメン男子生徒や女子生徒に説明をさせる。見学会には母親がついてくるので、汚い実習室はだめ。女性目線で考え、特にトイレをきれいにしている」との苦労談も。
◇企業への認知必要
秋田工業、岐阜工業とも、他校に比べ土木系企業への就職、進学率が高い。その理由を村上教諭は「企業側から、卒業生社員を派遣して話をさせたいという申し出がある。在校生に会社の話や現場での体験談を聞かせたり、施工現場を見学させたり、DVDで工事の様子を見せたりすることで、土木という仕事のイメージを具体的に分かるようにしていく。2年生全員にインターンシップを経験させることなどを通じ、土木を身近に感じながら成長すること」が、高い就職、進学率を保っている理由だと説明。
簑島教諭は、就職者数が少ないのは「求人が少ないから」と指摘。それに対し、「岐阜工業では、建設工学科40人の生徒のうち、2年生に進級する時、およそ半数ずつが建築と土木に分かれる。昨年、土木では19人が就職希望だったのに対し、50社から求人があった」とした上で、「(求人数は)PRを通して増えてきた。現場見学に連れて行く時は、必ず事前学習をさせる。あらかじめ聞きたいことを考えさせ、当日は必ず質問をするよう指導している。そうすると企業側は、この学校はよく勉強をしてきたと評価してくれる」。その努力が求人数の多さに結びついていると論じた。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年7月30日
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