爆発直後の3号機原子炉建屋(東京電力提供) |
平和利用の柱として1966年に始まった日本の原子力発電の営業運転は、2010年には全国17発電所で54基の原子炉が稼働し、全エネルギーの10.8%、発電電力量の30.8%を占めるに至っていた。しかし3・11の東日本大震災で過酷事故のあった福島第一発電所の4基以外の、50基の原子炉は間もなく停止する大飯原発2基も含めすべて停止することになる。
このような状況にあって、われわれインフラ関係者の取るべき行動は何であろうか。まず3・11の「フクシマ事故」の原因をインフラの面から徹底的に究明し再度災害を防止することである。事故の直接の原因は、福島第一原発の地盤高が津波高より低かったことにあるが、その地盤高の決定にインフラ関係者がどのような役割を果たしたのか、隣接する福島第二原発、近傍の女川原発がほぼ無事であったことを考えるとその役割の究明は不可欠である。これについては電力会社、土木学会などから報告されているようであるが断片的である。
◇規制委の新基準
次に重要なのは、ことし7月に原子力規制委員会が発表した新規制基準への対応である。新基準のポイントは過酷事故対策と地震・津波対策である。過酷事故の直接対策は原子力専門家に任せるとして、活断層の調査とその地震時の挙動の推定はインフラ関係者の役目である。最大津波の想定、防潮堤などの防水対策、冷却水取水対策、地下水汚染対策、火山噴火対策なども同様の役目である。
そして新基準では触れていないがこれらの対策がすべて破られた時に市民をどのように守るか、緊急時の救援・避難、長期にわたる除染や避難、生活再建対策を立てておくことはインフラの最も重要な役割である。
さらに長期的には日本のエネルギーをどうするかの問題がある。原発にはウラニウム資源枯渇、放射性廃棄物、寿命そして事故の過酷さという問題はあるが、世界的には各国は原発に大きな期待を持っている。一方、3・11後の日本が頼りにしている化石エネルギーには資源枯渇とともに地球温暖化という根本的問題がある。これは新エネルギーとして期待されるシェールガスなども同様である。自然エネルギー、再生可能エネルギーについては社会的期待が大きい割には量的束縛、経済性の問題が解決されていない。
これらの社会・経済・技術的問題の見通しを立て安全・安心な社会を発展させるのもわれわれインフラ関係者であることをあらためて認識したい。(陸)
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年8月9日
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