2013/08/10

【現場最前線】レインボーブリッジが化粧直し工事中!

東京・芝浦とお台場を結ぶ「レインボーブリッジ」。26日に開通から20年を迎える全長798mの長大橋は、現在、首都高速道路が経年劣化対策として、主ケーブルの塗り替え塗装を進めている。また、亜鉛メッキ鋼線を束ねてできている主ケーブル内にさびを発生させないように「ケーブル送気乾燥システム」を導入し、2014年度の完成を目指している。“二十歳"になる東京のシンボルは、新たなシステムを身にまとい、開通当時の主ケーブルのカラーを取り戻すだけでなく、その白色の輝きを増すことになる。

◇20年経過で主ケーブル塗り替え

 1993年8月に供用したレインボーブリッジは、東京港第一航路をまたぐ中央径間が長さ570m、芝浦、台場側の側径間がそれぞれ114mのつり橋だ。上下2層構造で、上層には首都高速11号台場線、下層には中央部に新交通システム・ゆりかもめ、その両側に臨港道路海岸青海線が通る。
 開通から20年が経過し、主塔をつなぐ主ケーブルに赤褐色の部分が目立ってきた。首都高速道路東京管理局保全設計第一課の七條哲彰課長は、「さびているわけではありません。主ケーブル外面塗装の劣化によって、亜鉛メッキ鋼線の上に施した下塗り塗装が露出している」と説明、外面塗装などの経年劣化が発生しているため、20年を機に11年10月から開通後初めての主ケーブル補修工事を進めているという。


下塗り塗装が現れたケーブル
◇塗装仕様

 主ケーブルの塗装仕様は8層。上塗りが3層、下塗りが5層という塗装構成になっている。このうち、今回は下塗り第4層が露出している。構造的には問題ないが、放っておくと主ケーブル内に雨水や海塩が入り、内部が腐食する可能性がある。「主ケーブルの防食機能が低下しているため、全面的な補修が必要となった」と説明を加える。
 ケーブル塗装補修は、主ケーブルを始め、ケーブルバンド、ハンドロープなどケーブル付属物の塗装を塗り替える。ケーブルバンドは、ケーブルストランドに直接設置されているため、バンド端部のコーキング(防水シール材)はケーブル内への水の浸水を防ぐ重要なものだ。
 塗装仕様については、「一部は劣化したものの、20年間、機能を維持してきたことを踏まえ、主ケーブルは当初の塗装仕様と同様のクロロプレン系ゴムで塗り替える。ケーブルバンドなどの塗装も、メタル系で一般的なポリウレタン樹脂塗装で塗り替える」(七條課長)。



◇飛散防止シェルター/キャットウォーク足場

 塗り替え塗装工事は、その準備として、作業足場の設置も極めて重要だ。主ケーブルの下には11号台場線が走る。交通量は12年度の平日平均で約6万4000台に及ぶ。海上にも船舶が往来している。東京管理局保全工事事務所の山口正晃工事・点検長は、キャットウォーク足場の設置にも徹底的な落下防止対策など安全面を重視して取り組んでいると明かす。「材料の搬入にも車線規制が必要になる。昼間は交通量が多いため、夜間に限定し、高速道路の交通を規制しながら少しずつ進めている。昼間作業が必要な時には路肩を規制させてもらう時もある」という。当初の足場設置だけでも約半年の時間を要したことが、その慎重さを物語る。
 山口工事・点検長は、「塗装工事にも道路交通と海上交通の安全性には最大の注意を払い、影響をなくすようにしている」と話す。塗装工事は、キャットウォーク足場の上に設置した養生シートで囲われた「飛散防止シェルター」の中で当たる。人の手で主ケーブルの古い塗膜を除去し、新たな塗装を施している。骨組み自体が移動でき、作業時に養生シートを広げ全体を覆い、作業していないときにはシートを丸めた上で安全な場所に固定している。作業工程によって、2、3カ所で同時に進める。基本的に作業は昼間で、夜間の作業はしない。また、天候といった自然環境も作業に大きな影響を及ぼす。風だけでなく、雨が少しでも降ると塗装作業はできない。天候を読みながら進め、途中で雨が降ったら中止する。湿度が85%を超えると作業できないと説明する。

飛散防止シェルター


◇送気乾燥システム

 主ケーブルは、1本の径が約5.37mmの素線(亜鉛メッキ鋼線)からなる。これを127本束ねたものが「1ストランド」で、径は約7cm。さらに127ストランド束ねると径76.2cmの主ケーブルとなる。
 約1万6000本の亜鉛メッキ鋼線からなる主ケーブルの内部にさびを発生させないように「ケーブル送気乾燥システム」を新たに導入する。
 「芝浦側と台場側のアンカレイジ屋上に送気設備を設置し、そこから乾燥した空気を24時間ケーブル内に送り込み、主ケーブル内の湿度を一定に保つようにする。高湿度の腐食環境下にある主ケーブルの内部を改善させる」(七條課長)。
 送気設備はフィルター、除湿機、ブロワ、サイレンサー、アフタークーラーで構成し、ここから送気配管によって乾燥した空気を主ケーブルに送り込む。ケーブルに設置する送気カバーからケーブル内に送気し、排気カバーから排気する。首都高でのシステム導入は、今回が初めて。技術導入に当たっては、実績のある本州四国連絡高速道路の技術協力を得ながら進めている。試験施工段階で見極めながら今後、適切な送気量などを決めていく。

送気設備

◇施工スケジュール

 芝浦の海側は塗装工事を完了、建設当時のきれいな白色のケーブルが蘇った。現在、それに続く中央径間部分の上り線と下り線部分を並行して施工中だ。港内側も足場の設置が完了し、塗装工事を進める。「主ケーブルの塗り替え工事は、首都高として初めて。芝浦側はパイロット工事的な意味合いもある。この施工ノウハウをこれから進める予定の台場側の施工に展開していく」(山口工事・点検長)。
 塗装・補修工事と送気乾燥システムの設置を含めて、14年度に全体完成させる予定だ。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年8月9日

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