2011/11/24

JR東海がリニア中間駅を全額負担/建設費を大幅圧縮して設計

 リニア中央新幹線東京~大阪間の沿線各県に1駅ずつ設置する中間駅の費用負担問題が決着した。建設・営業主体の東海旅客鉄道(JR東海)は、地元自治体に全額負担を求めていた従来方針を撤回し、土地代も含めて同社が全額負担する意向を表明した。
 中間駅の建設事業費は地下式(神奈川、奈良)が約2200億円、地上式(山梨、長野、岐阜、三重)が約350億円と試算されている。総額約5900億円もの新たな負担を軽減するため、同社は徹底した建設費の圧縮を行い「コンパクトな駅」にする考えだ。
 関係6県の代表と21日、都内で会談し、JR東海の山田佳臣社長が全額負担への方針転換を伝えた。県側の反発を踏まえた譲歩措置で、これにより事業の迅速化を図る。山田社長は「互いに喉に刺さった骨が取れて、いろいろなことが円滑に回る」と関係改善に期待感を示した。
 地元自治体には、取得用地や発生土処理場のあっせんなど工事促進への協力を要請。交通広場や自由通路、周辺道路といった県全体の発展につながる公共施設の整備を求めた。
 同社の対応について県側は、「早期実現のため思い切った決断をされた」(古田肇岐阜県知事)などと一様に評価の声を上げた。また、前田武志国土交通相も22日の閣議後会見で、「劇的に(全額負担へと)踏み切られた。歓迎すべきことだ。とにかく早くリニアを実現することが、JR東海にとっても経営上重要であり、さすがは経営体だ」と評価した。
 中間駅は2面4線を有する島式ホームを備え、ホームと出入口を階段、エレベーター、エスカレーターで連絡する。建設費圧縮の観点から、設備仕様の詳細は今後詰める。
 同社が必要と判断する設備以外で、地元が併設したいと考える設備については、建設費と維持管理費の地元負担を前提に工事計画に盛り込む。さらに費用がかさむことになる既存駅の改修や連絡施設の整備は当面実施せず、リニアの全線開通に注力する。
 リニア新幹線は、先行整備する東京~名古屋間が2014年度の着工、27年度の開通を目指している。45年までに大阪まで延伸し、3大都市圏を1時間程度で結ぶ計画だ。大深度地下を活用して建設する東京、名古屋、大阪の各ターミナル駅はJR東海が自己資金で建設する。中間駅を除くターミナル駅と路線の建設費は8兆4400億円に達する見通し。

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