2011/11/14

シッピングコンテナで3階建て仮設住宅

 「紙の建築」や世界各地の被災地での仮設建築などで知られる坂茂氏(坂茂建築設計)が、東日本大震災の被災地である宮城県女川町で設計した仮設住宅が完成した。仮設住宅としては全国初の3階建てで、海上輸送用のコンテナを重ねるという新たな試みは、広く国内外の耳目を集めている。
 同事務所では震災直後の3月から被災地などの避難所でのプライバシーを確保するため、紙管による間仕切りシステムを提供。女川町でも間仕切りに蚊帳を吊すなどの工夫を加えた。これがきっかけとなって3階建て仮設住宅の提案が実現した。
 高台にある町民野球場のグラウンドに完成した3階建て住宅は、6棟144戸。2階建て住宅も3棟45戸完成している。今後、膜構造の商業施設や紙管による児童図書館などの建築も予定されているという。
 仮設住宅は7月中旬に中国からコンテナの運搬準備に入り、8月8日に着工した。コンテナは2.5×6.0m、高さ2.5mのいわゆる「20フィート」と呼ばれるタイプ。4年ほど前、ニューヨーク、サンタモニカ、東京を移動した仮設美術館プロジェクトで採用した経験がある。この時と同様、構造設計のオーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ・ジャパン・リミテッド、施工のTSP太陽とチームを組んだ。
 コンテナは1つひとつは強度があるが、建築基準法上は認められていないため、2年間の仮設であることを条件に構造認定を得た。コンテナ同士の接合部には海上輸送と同じ金物を使っている。垂直方向に2層、3層と重ねるとともに、水平方向には1つおきにフレームだけのコンテナを配置してつなげた。
 標準タイプとして2つつなげた9坪(約30㎡)2DKタイプ72戸のほか、3つつないだ12坪3DK43戸、6坪のワンルーム74戸を設けている。
 現場に常駐した坂茂建築設計の渡部玲士氏は「コンテナにも相性があって2つ並べると微妙に床面の高さが違う。キッチンなど水回り部分での施工の難しさがあった。壁は鉄板なので配管などの穴は事前に開けているが、現場での取り付け段階で開け直すこともあった」と振り返る。
 壁面収納工事は坂氏が中心となって活動しているボランタリー建築家機構(VAN)が当たり、「夏休みは全国から大勢の学生が集まり大部屋に寝泊まりしながら取り付けてくれた」(渡部氏)とも。
 3階建て仮設住宅は6日から入居を開始。これで宮城県内では当初計画の仮設住宅約2万2,000戸がすべて完成したことになる。

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