2011/11/25

連載・BIMはIMへ/#2 コンピューティショナル・デザイン

algodeに展示されたシェルターの製作
  「ジェネレーティブ」「アルゴリズミック」「コンピューティショナル」「インタラクティブ」「ジオメトリック」。建築デザインの世界で、急速にこれらの言葉が使われるようになってきた。発達したコンピューターの能力を生かして、幾何的な概念やアルゴリズムで構造や意匠を生成する手法は、世界の建築に浸透し始めている。
 今月13、14の両日、東京・芝の建築会館で、アルゴリズミック・デザインの国際エキシビジョン「ALGODE TOKYO2011(アルゴデ)」が開かれた。米プリンストン大で教べんをとる建築家のジェシー・ライザー氏が、無数に穴が空いたコンクリート製の波打つファサードで覆われたドバイのビル「O14」を題材に基調講演したほか、つくばエクスプレスの柏の葉キャンパス駅(千葉県柏市)などをアルゴリズミックデザインで設計した渡辺誠氏らも登壇、学生を始めとする多くの聴衆にデザインの目的をアピールした。

ビルバオ・グッゲンハイム博物館

 ビルバオ・グッゲンハイム美術館の設計で有名な米国の建築家、フランク・ゲーリー氏は、同美術館の設計に航空力学向けのソフトウエア「CATIA」を適用、構造や部材の設計にコンピューターを活用した。コンピューティショナル・デザインは、このころから建築の世界に進出し始めた。
 構造や部材の数量決定に使われたコンピューターは、最近になってデザインそのものを決定するツールとしても使われている。イラク出身のザハ・ハディッド、スイス出身の建築家ユニット、ヘルツォーク&ド・ムーロン各氏らも積極的にコンピューターを活用している。
 従来の概念にとらわれない設計が可能になってきたのは、手計算では不可能な複雑な要素を、パラメーター、スクリプト、アルゴリズムで解析できるからだ。人間は建築に求められる機能を定義し、解析はコンピューターにやらせるという分担が可能になった。
 例えば、地球上の各地で異なる太陽の軌跡に合わせて、一番熱負荷の小さなルーバーを建物に取り付ける設計もできれば、逆に最も効率のよい太陽電池パネルの置き方も計算できる。
 アルゴデ2011では、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)や東京理科大学などの学生がアルゴリズミック・デザインで設計した、被災地向けのシェルターが展示された。3次元CADとモデリングツールを使って設計した図面から、部材のデータを取り出して、レーザーカッターでベニヤ板を成型、組み合わせて作り出した。
 こうした取り組みは、海外では多くの大学院なども行っているが、日本で本格的に開かれたのは今回が初めて。このエキシビジョンは、日本建築学会の情報システム技術委員会(委員長・加賀有津子阪大大学院教授)と、アルゴリズミック・デザイン小委員会(主査・池田靖史慶大教授)が開いたものだ。
 アムステルダムで開かれたベントレー社の「Be Inspired」アワードでも、オランダの建築家ユニット、UNスタジオや、英国の組織事務所、フォスターアンドパートナーズ、技術コンサルのArupなどがコンピューティショナル・デザインについてのプレゼンテーションを行っている。

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