BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)という言葉が、日本でも一般的になってきた。BIMは、手書き図面の昔とは違い、プロジェクトの計画から設計、施工、維持管理まで、一貫した情報の受け渡しをデジタルベースで行う。しかし、ビルディングに限らず、インフラ全般にわたる情報共有が進む現在では、単に「IM(インフォメーション・モデリング)」と呼ばれ始めている。情報とコンピューターは、どこまで建築やインフラに生かされるのか。海外の先端事例を中心に、IMの現在と未来を検証する。
CAD大手の米国・ベントレー・システムズは、今月8日からオランダのアムステルダムで、同社のシステムを使った優れたインフラ事例を表彰する「Be Inspired」というイベントを開き、20部門にわたり最優秀者を選定した=写真。イベントでは、審査に当たって「ファイナリスト」と呼ばれる事前審査通過者57チームが、会場でプレゼンテーションを展開した。
プレゼンテーションは、構造計画から幾何学的設計、橋梁、道路、鉄道、プラントなど多岐にわたり、いずれも計画から施工、維持管理まで情報をスムーズに流すことの重要性を訴えた。
イベントの冒頭、ベントレー社のグレゴリー・S・ベントレーCEO(最高経営責任者)は「これまで設計から施工、運営に“ハンド・オフ”されていた情報は、今後段階ごとの壁をぬぐい去り、“ハンド・オン”されるべきだ」と演説した。
計画・設計段階においてCADで設計されたデータは、発注者や設計者から施工者に塊として手渡されていた。さらに施工後は、施工者の手から物件の管理者にデータの塊として手渡され、微妙なニュアンスやかかわった人々の足跡が取りさられたデータになってしまっている。
物件管理者や施工者らは、多くの人たちが話し合い、収まるべくして収まったという経過が分からないまま、施工や維持管理フェーズに突入する。
グレゴリーCEOは、こうしたフェーズの間の情報の欠落を「ウオール(壁)」と表現する。
ベントレーが提唱する「ハンド・オン」とは、すべてのフェーズで統合されたデータを流していくことだ。クラウド・コンピューティングをベースに、設計、施工、維持管理にかかわる人々が、同じデータを共有する。これがIMの考え方だ。
ベントレー社はこの日、PDF形式ファイルで3次元モデル図面を扱うため、アドビシステムズ社、そしてブルービームソフトウエア社(本社・米国カリフォルニア州、リチャード・リー社長)と業務提携したと発表した。
3次元図面をPDFで、プラットフォームに依存せずに受け渡す技術をブルービーム社が担当、図面作成や変更する権利関係(ライト・マネジメント)の技術をアドビが担当し、さまざまなフェーズの人々の間で、円滑なデータ受け渡しを実現する。
ベントレーはこれを「i-model」と名付けて設計データの受け渡し標準にしたい考えだ。設計(Architecture)、エンジ(Engineering)、施工(Construction)、維持管理(Operations)の「AECO」ワークフローを通したハンド・オンが、これからのIMの姿となる。
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