UNスタジオのタックスオフィス |
UNスタジオがオランダに設計したオフィスビル「EEA&Tax Offices」は25階建ての高層ビルだが、ファサードに取り付けられたルーバーに特徴がある。各階のファサードには、帽子のつばような大きなルーバーが連続して取り付けられているが、建物の東西南北でその断面が変化する。
季節ごとの太陽軌跡を計算し、夏は日差しが室内に入らず、冬は最大限日照を取り込む形が厳密に計算されている。そのため三角形をしている断面は、方向によってとがったり正三角形に近い形へと連続して変化する。
さらに建物の平面も、ビル周辺の風を使って建物を自然に冷却する構造を採用した。飛行機の翼のように風を整流し、夏季には建物の冷房を最小限にする。自然の要素をできるだけ取り入れて、CO2発生量を最小にすることがこの建築の狙いだという。
一方、Arupがシンガポールのマリーナ・ベイ・サンズでデザインした「ArtScience Museum」は、構造の可能性への挑戦のような建築だ。手のひらを上向きに開いたような構造物が、10本の柱で支えられ空中に浮かび上がっている。内部は膨大な量の鉄骨が組み合わされ、手のひらからは10本の「Finger(指)」と呼ばれる構造物が天空に伸び上がる。
驚くべきはその設計期間の短さだ。入札時に16週間でワイヤーフレーム構造解析と当初設計、入札書類作成などを終えている。さらに建設フェーズでは12週間で、最終設計、誤差15mm以内での表面調整、工事書類作成、鉄骨製作業者向けのモデル作成まで完了した。
Arupの美術館
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設計は、ライノセラスによる設計、ベントレー社のGC(ジェネレーティブ・コンポーネンツ)によるパラメトリック・デザイン、ベントレー・ストラクチュラルによるモデル化、マイクロステーションによる図面化、テクラ・ストラクチャーによる鉄骨詳細加工図面製作を、データ連携させながら行ったという。
重量4900t、延べ4400人の鉄骨製作者、83に及ぶ構造図面という巨大な建築でも、コンピューティショナル・デザインとBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)によるデータ連係が、短期間でも複雑な設計が可能なことを証明した。
ベントレー社のブーピンダー・シン上席役員は「IM(インフォメーション・モデリング・アンド・モビリティ)は、建築、構造、エンジニアリング、コントラクター、ファブリケーターなどインダストリーが複雑化している中で、いかに1つのモデルに情報を集約することができるかが重要だ。われわれが提唱するモデリングとモビリティーは、たくさんの情報をつなぐための概念だ」と話す。
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