便器は陶器である。金型に流し込めば簡単にできあがるわけではなく、原料となる泥を型に流し込み、乾燥させ、焼成する工程を経なければ完成しない。しかも、焼成後は元の大きさより10%以上も小さくなるため、縮小幅を見込んで作り始めなければならない。均一な大きさの便器を作るには、経験を重ねて“ちょうどいい加減”を知ること、つまりアナログ技術の結集が不可欠だ。
一方、ウォシュレットは、ハイテク、デジタル技術を進化させながら現在の使いやすさにこぎ着けた。
「ローテクを極めて、ハイテクを生み出す。または、ハイテクを使って、究極のローテクを実現する。これがトイレづくりの面白さ」と著者は述べている。
ローテクとハイテク、アナログとデジタルの“ちょうどいい”融合が、ものづくりを物語に昇華させるポイントといえるのではないだろうか。海外からみれば、日本のトイレは「ロボットトイレ」らしい。限りなくハイテク化して快適になっても、物語のベースには便器の手作り感がある。
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