2015/03/05

【建築】移動性能と居住性追求した究極の環境建築 「合体移動ハウス・トリカーゴ」

移動できる住宅こそ究極の環境建築になる--建築家の井口浩氏は、軽自動車でも運搬できるキャンピングトレーラー「合体移動ハウス・トリカーゴ」を設計した。建築の性能を分割、移動、結合することで、家族構成や暮らし方に合わせて柔軟に対応できる無駄のない空間だ。

 環境に配慮した設計に取り組んできた井口氏が移動する建築を設計したきっかけは、2011年の東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故だ。震災後に避難指示区域を訪ねた。物理的な損害がないにもかかわらず、住めなくなった多くの建築を見て、「どんなに良い建築や壊れない建築をつくっても原発事故や液状化によって住めなくなる可能性がある」と気付かされた。
 重視したのは移動性能と居住性だ。エネルギー消費の大きい大型のトレーラーハウスではなく、軽自動車で運搬できる安価で軽量な構成とした。太陽光発電と風力発電によって最低限の電力を賄う居住性も確保した。用途に想定するのはキャンピングトレーラーとしてのレジャー使用、災害時における当面の避難施設、そして住宅だ。住宅としては、複数のトリカーゴを連結して住機能を高めることができる。「車両と建築の中間を目指した」という。
 「トリカーゴ」は2月に幕張メッセで開かれたジャパンキャンピングカーショー2015に出展し、来場者の関心を集めた。「人口が減少すれば建築は余り、設計ニーズも減少する。その時に建築設計のノウハウを活用するひとつの可能性を示すことができたのではないか」と語る。
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