2014/12/19

【復興特別版】JIA東北が全面支援の『子どもの村東北』が開村 

日本建築家協会東北支部(JIA東北)復興支援委員会が全面的に支援した『子どもの村東北』が12月19日、仙台市太白区茂庭台に開村する。「すべての子どもに愛ある家庭を」のスローガンを掲げ、東日本大震災で親を亡くした震災孤児など、社会的養護を必要とする子どもたちに、家庭的環境と専門家による支援を提供する拠点となる。その建設と運営には、活動に賛同したJIAのほか、行政や企業、個人など多様な主体が参画。未来ある子どもたちを永続的に支えていく。写真はセンターハウス棟。

【あいさつ・ぬくもり感じる子育て施設/NPO子どもの村東北理事長 飯沼一宇】

NPO子どもの村東北理事長 飯沼一宇氏
無垢の杉材の壁が新鮮で温かみのある雰囲気を醸し出しているセンターハウス。木造平屋建てが2棟、2階建てが1棟の家族の家が建っています。ここでは震災やさまざまな理由で親と暮らせない子どもたちが里親(育親)と共に育ちます。家庭的環境のもとで、子どもたちがのびのびと生活し、ぬくもりを感じる建物をつくっていただけたと思っています。
 センターハウスにいる保育士、児童心理士、小児科医などが子育てをサポートします。センターハウスではカウンセリングルームなどを備えており、村の代表、責任者である“村長”の家もあります。村はさまざまな役割を併せ持つ子育て総合施設ともいえます。
 NPOですので、建設はすべて多方面からのご寄付で完成したものです。関係各位に深く感謝します。
 開村を迎えましたが、これからが活動の本番です。今後とも末永い、力強いご支援をお願いいたします。

【地域に開く家庭的環境/マスターアーキテクト・松本純一郎設計事務所 松本純一郎】

マスターアーキテクト・松本純一郎設計事務所 松本純一郎
震災直後から、国際NGO・SOS子どもの村インターナショナルから日本で唯一の子どもの村である『子どもの村福岡』に被災時支援活動の要請があり、その支援と東北の人々の熱意により、2012年6月に仙台でNPO『子どもの村東北』が設立されました。
 SOS子どもの村は、第二次世界大戦の戦災孤児を救うため、オーストラリアの小児科医を中心に設立された国際NGOで、世界133カ国に500カ所以上の子どもの村があり、国内では福岡に次いで東北が2番目となります。
 東日本大震災で親を亡くした子どもたちの多くは親族の手で育てられていますが、その方々の高齢化などにより、今後の生活の場の確保が課題となりつつあり、こうした子どもたちを家庭的環境で育てることが子どもの村の目指すところです。
 SOS子どもの村には建築に当たってのガイドラインがあり、この趣旨に賛同したJIA東北支部が全面的に支援することを決め、支部長らによるアドバイザリーチームとマスターアーキテクト、各棟担当建築家で構成する宮城地域会員のプロジェクトチームを結成しました。
 その後、仙台市から太白区茂庭台市有地の借地が決まり、その約5400㎡の敷地にセンターハウスと多目的ホール、子どもたちと育親が生活する家族の家を全体で5棟計画しました。地域に開かれたセンターハウスを北西側前面道路沿いに設け、家族の家は一般家庭に近い環境となるよう、外周道路に接して配置しました。各棟の中央には子どもたちの遊び場となる芝張りの広場を設け、交流とうるおいの場を創出しました。また、世界的な画家・彫刻家の奈良美智さんからお借りする作品「サーフィンドッグ」も設置されます。

【センターハウス棟/周辺と調和する集落をイメージ/針生承一建築研究所 針生承一】 

針生承一氏
センターハウスはシェルタードコミュニティーとして子どもの村での役場のような場で、これを北東の市道側へ配置することで周辺地域からのゲートとしての働きと内外の交流スペースを兼ねます。

多目的ホール
センターハウスを構成する諸室は多目的ホール、交流を目的とするセンターハウス1、比較的プライバシーを優先するセンターハウス2、村長の家、アシスタントの家の5つのゾーンに分かれます。空間の構成は周辺と調和する集落のイメージとし大きな量塊になるのを避けることや通風、採光の確保を考えできるだけ分節化する手法としました。一方ではこれらをつなぐものとしてカスケードというみち空間を設け、各分節の結節点や外部からの出入口は全てここにつながる仕組みとしています。

センターハウス正面
カスケードは幅3.64m、高さを抑えた緩い円弧上の断面としました。内外につながる細長い広場でもありコンサート、ギャラリー、レクチュア、食事会、軽運動など様々な活動に対応できます。
 架構は木造在来工法で屋根架構は全て外断熱の垂木構造とし垂木野地板現しとすることで木の素材を表現しました。

【「家族」を建物プランに写し込む/家族の家A棟・B棟/SOYsource建築設計事務所 安田直民】

家族の家A棟、B棟は子どもの村の建築ガイドラインを基本に、東北の気候風土にあわせて計画された住宅形式の施設です。地域の工務店が地場産材を使って建設したこの建物は、国土交通省が進めている「地域型住宅」の思想と共通するもので、地元住宅生産者の協力によって実現しました。

家族の家A棟
A棟の建物は、平屋で大きなメーンルームを囲むように個室が配置され、ここで営まれる「家族」の関係がそのまま建物のプランに写されています。メーンルームはキッチンを中心に、外部デッキや大黒柱など「たまる」ことのできる様々な場所が散りばめられています。個室は続き間形式で、子どもたちの年齢や性別にあわせて、つなげたり、間仕切ったりすることが可能です。

家族の家B棟
吹抜のあるメーンルームを中心に計画されたB棟は、各個室が吹抜を介してつながります。
 メーンルームはキッチンを中心に、正面には大きな窓、デッキへ出ることもできるベンチが配置されます。2階の個室は、けんどん間仕切で4つに仕切られ、子どもの年齢、性別によって自由なレイアウトが可能です。

【家族の家E棟/広場から子ども導く形態を創造/鈴木弘人設計事務所 鈴木弘二】

鈴木弘二氏
家族の家E棟は、子育ての親2人と子ども6人が楽しく快適で健康に住まうことができる家を創造することを目的として計画しました。東南向きに広場に面する配置条件から、できるだけ広場に対して、視線が届き、施設住民が見守り合い、交わることのできる視覚的・空間的に開く家としました。

E棟の内部
LDKが住まいの中心となるよう配置し、その周りに寝室やサニタリーを設け、その間に玄関や廊下などの空間を挿入し、十字プランのような平面構成としました。また、広場側や廊下の突き当たりにオープンデッキを設け、外部に出られるような動線と視線の通り抜けを確保し、外部との連続性を高めるよう配慮しました。

家族の家E棟
広場から見るこの家の形態は、切り妻のプレーンな家型とし、その壁面に大きな家型の開口を設け、下部のオープンデッキに2本の太い象徴的な木柱を配置し、ボリューム感あふれる内部空間へ、子どもたちを広場から導き入れるような魅力ある形態を創造しました。内部仕上げは、無垢のフローリング、スイス漆喰などを使用し、暖房は床下暖房を設置し、子どもたちの健康面にも十分配慮した計画としました。

◆工事概要
〈センターハウス棟〉
▽資金提供者=公益財団法人JKA
▽設計・監理=針生承一建築研究所
▽施工=鎌内工務店
▽構造・規模=木造平屋建て491㎡
〈家族の家A棟、B棟〉
▽資金提供者=〈A棟〉イケア・ジャパン、〈B棟〉日本小児科医会
▽設計・監理=SOYsource建築設計事務所
▽施工=センケンホーム
▽構造・規模=〈A棟〉木造平屋建て157㎡、〈B棟〉木造2階建て156㎡
〈家族の家E棟〉
▽資金提供者=三光不動産
▽設計・監理=鈴木弘人設計事務所
▽施工=三光不動産
▽構造・規模=木造平屋建て141㎡

◆協力メーカー
▽イケア・ジャパン(IKEA仙台)▽LIXIL▽アイリスオーヤマ▽サンポット▽チャネルオリジナル▽仙台プロパン▽フッコー▽クオリティー▽三晃金属工業▽日進産業▽日本製紙木材▽イケダコーポレーション▽樹建設工業▽MDES▽オオシロ▽クラスコファニチャー▽三協テック東北▽スマイルeサポート▽双日建材▽創電社▽大光電機▽司建商▽日新設備▽パナソニックリビング北海道・東北▽日本プラチカ▽北栄電器、ポラテック東北▽ヤマトコーディング▽吉田産業
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