2014/12/05

【土木学会】空港ビルが孤立! その時どうする? 「修羅場」を教材に模擬授業

「こんな時、どのように行動しますか」--。土木学会建設マネジメント委員会の建設ケースメソッド普及小委員会(委員長・木下賢司プレストレスト・コンクリート建設業協会専務理事)は3日、仙台市青葉区のアエルでケースメソッドを活用した災害対応マネジメント力の育成に関する模擬授業を開いた=写真。東日本大震災の津波で約1700人が孤立状態となった仙台空港ターミナルビルの状況を疑似体験し、伊藤克彦同ビル社長の立場で避難者の安全確保対策などを考えるとともに、その対策についてグループ討議した。

 模擬授業は 震災の初動対応で国や自治体、民間企業など、組織・立場の異なる人々が遭遇したさまざまな「修羅場」を取り込んだケースを教材として使う「ケースメソッド」という手法を採用することで、総合的な災害マネジメント力を養う。
 受講者はケースの登場人物の立場で対応策を考え、判断するとともに、グループ討議などを通じて認識を深める。
 この日は、建設業界のほか、学識者や小売業、サービス業など、幅広い分野から関係者21人が受講。4グループに分かれ、▽ビルにはどのような人たちが避難し、どのような課題があると考えられるか。その課題に対してどのように行動するか▽近くで発生した火災のビルへの延焼リスクがある中、どのように行動するか--の2項目についてグループ討議した。
 その後、震災当時に東北地方整備局で防災課長を務めていた熊谷順子氏が講師となり、全体討議を行った。
 震災当日、同ビルには旅客および従業員以外に大津波警報を聞いた周辺住民が次々と駆け付けた。津波の襲来によって1階部分が約3m水没し、ビル機能は完全にまひ、外部への通信手段も途絶された。また、近接する貨物ターミナルビルが爆発炎上し続け、ジェット燃料の漏えいなどによる延焼の危険性もあった。
 伊藤社長は津波の到着までに全員を3階に避難させるよう指示。老人ホームから避難した高齢者は優先的に有料待合室に割り当てた。火災延焼の危険性もあったが、避難者のパニックをひきおこす恐れがあったため消火器の点検は行わなかった。
 受講者からは活発な意見が出されたほか、授業終了後には「新しく気付かされたことが非常に多かった」「地域住民に防災を考えてもらうのに大いに役立つのではないか」といった感想も聞かれた。
 木下委員長は「今回、初めて建設業界以外の皆さんにも参加していただいたが、災害対応力を養う上で非常に有効と感じた。今後は地震の発生が予想されている地域を中心に、全国で授業を行っていきたい」と話している。
 同委員会では2015年3月に仙台市内で開かれる第3回国連防災世界会議で模擬授業に関するシンポジウムを開く予定だ。
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