2016/07/09

【都市河川】目黒川の悪臭をなくしたい! 目黒川の底質改善に民間技術募集へ


 「悩ましい臭いを取り除くため、民間の力を借りたい」と呼び掛けるのは、東京都目黒区都市整備部土木工事課主査の高野拡昭氏だ。区内を4㎞にわたり流れる目黒川では、川底に堆積した汚濁物から悪臭が発生、その対策を求める地域住民の声が絶えない。区は底質改善を目的とした水質浄化の公開実験に踏み切ることを決め、4日から民間技術の募集をスタートする。「最適な対策を住民とともに探っていきたい」(高野氏)と動き出した。

 目黒川は、降雨時に合流式下水道から汚濁水が入り込み、潮の満ち引きによって水量の変化も著しい。下水道から流入した汚濁物はヘドロになり、下流の感潮区間に堆積し、これが臭い発生の原因と考えられている。干潮時にはヘドロが干出する区間もあり、さらにきつい臭いを発生させている。高野氏は「特に夏場は沿岸住民から改善要望が多くなる」と説明する。

目黒川基図

 これまで区は定期的に浚渫工などの対策を講じてきたが、根本的な問題の解決には至っていない。1970年代までの目黒川は都内でも指折りの汚い川だったが、水質改善が進み、現在は鮎の遡(そ)上も確認されているほど回復してきたが、臭いの問題だけは置き去りのままだ。特に区内4㎞のうち、下流側の2㎞は勾配が急で、干潮時に水量が極端に減りやすいため、臭いの発生量も多い。
 区は根本的な解決策を探ろうと、大阪府堺市の中心部を流れる土居川の水質浄化試験で実績のある応用技術(大阪市)に実験業務を依頼した。民間から技術を広く公募し、提案の中から複数の技術を選び、8月から半年間かけて、区民に公開する形で浄化の効果を探る計画だ。同社エンジニアリング本部の足立忠行防災・環境解析部水圏解析グループ長は「臭いの問題を抱えるのは目黒川だけではない。都内ではスカム(浮上泥)による臭いに悩まされている地域も多い。目黒川の底質改善が都市河川のモデルになれば」と期待をのぞかせる。
 難しいのは川の状況や水質によって対策の技術も違ってくる点だ。海水をポンプで上流に運び、干出を解消する手立てもあるが、川の中に資機材を入れるような大がかりな実験設備の対応が難しいことから、公開実験では川の水を入れた槽内で技術検証を進めるスタイルを採用し、住民に浄化のプロセスや効果を知ってもらう狙いもある。
 川のきれいさを知る手がかりの1つと言われる生物化学的酸素要求量(BOD)では、汚い川の分類には属さない目黒川だが、水中の酸素量を示す溶存酸素は1リットル当たり3mmグラム程度にとどまり、一般的な数値より低い状況だ。同社の下田淳事業企画・推進ユニット事業推進マネージャーは「目黒川が自然の力で回復できるレベルまで持っていくことがわれわれの役目」と強調する。

水質浄化実験水槽設置の概略図

 実験では目黒川から採取したヘドロを60cm槽内に敷き詰め、その上に河川水を入れ、浄化の改善状況が誰にでも分かるように実験装置自体を川沿いのオープンスペースに設置する。公募する技術は広く、あらゆる手法を取り込む。底質改善対策を目的とし、技術のメカニズムが明確であり、副次的な環境問題を生じなければ種類は問わない。実績がなくても、適用可能な段階である新技術も受け付ける。応用技術が土居川で行った技術公募では二十数件もの技術が集まった。足立氏は「目黒川でも数多くの提案が出てくれば」と期待する。
 区は、最大6回の底質分析を行い、目黒川に合った技術を選定する計画。高野氏は「どこまで改善できるかも含め、よりよい対策をみつけたい。最適な技術が確認できれば、実際の対策に乗り出していきたい」と説明する。区は浚渫工や浄化実験など目黒川の環境改善に向けた2016年度予算として、8526万円を計上している。技術の募集要領は近く区のホームページにアップされる。
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