2016/04/07

【日本建築設計学会賞】初の大賞に島田陽氏の「石切の住居」 敷地の魅力いかす思想を評価


 日本建築設計学会(竹山聖会長)は5日、第1回日本建築設計学会賞の公開審査を開いた。大賞には島田陽氏(タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所)の「石切の住居」=写真=を選出した。公開審査に進んだ入賞6作品の設計者には作品集出版の特典が与えられる。

 選考委員を務めた竹山会長は、「この賞は建築設計学会の芯となる事業。今後隔年で開催するが、大事に育てていきたい」と述べ、大賞に選んだ島田氏には「敷地の魅力を再発見し、周囲を愛するという思想がすばらしい。周りに溶け込むようで大事なところは切り離している。高等な技術だ」と絶賛した。

島田陽氏(タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所)

 石切の住居(S造2階建て延べ134㎡)は、コンクリート壁を設けた1階の上に黒い家型の構造物を載せ、古い家と新しい家が混在する周囲の景観を取り入れている。島田氏は「これまでで一番悩んだ作品だった。現物を見ていただいた上での受賞であり、大変うれしい。また、設計に対する考え方も評価していただき、光栄に思う」と喜びの言葉を述べた。
 選考委員は竹山会長と古谷誠章早大教授、五十嵐太郎東北大大学院教授、倉方俊輔大阪市大准教授の4人が務めた。現地審査は、竹山会長と倉方准教授が東日本、古谷教授と五十嵐教授が西日本を拠点とする設計者の作品を担当した。

 入賞作品と設計者は次のとおり(敬称略)。
 ▽西原の壁(東京都渋谷区)=桑原賢典(SABAOARCH一級建築士事務所)。
 ▽裏庭の家(茨城県日立市)=松岡聡+田村裕希(松岡聡+田村裕希)。
 ▽四条木製ビル/第15長谷ビル(京都市中京区)=河井敏明(一級建築士事務所河井事務所)。
 ▽石切の住居(大阪府東大阪市)=島田陽(タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所)。
 ▽カトリック鈴鹿教会(三重県鈴鹿市)=竹口健太郎+山本麻子(アルファヴィル一級建築士事務所)。
 ▽日本キリスト教団東戸塚教会(横浜市戸塚区)=平田晃久(平田晃久建築設計事務所)。
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