2014/08/03

【北海道新幹線】2035年に札幌まで 北日本結び地域発展担う


東京や京都などと並び日本を代表する観光地となった北海道。国内のみならず東アジアなどからの観光客も増え続けている。この成長のもととなったのは観光資源はもちろん、豊かな自然環境と良質な食材であるが、それを支えてきたのは鉄道・道路網などを主体とする交通インフラであることを忘れてはならない。なかでも北海道新幹線の札幌延伸は道民の長年の夢であり、これからの北海道の発展を左右する重要な課題でもある。画像は函館総合車両基地完成予想図(提供:鉄道建設・運輸施設整備支援機構北海道新幹線建設局)。
 北海道新幹線は、東北新幹線の新青森駅から函館市付近・小樽市付近を経て札幌市に至る、延長約360㎞に及ぶ路線で、青函トンネルおよびその前後約82㎞の区間については、すでに新幹線規格で完成している。北海道新幹線の駅は、青森県今別町の現・津軽今別駅に位置する奥津軽いまべつ駅、北海道木古内町に位置する木古内駅、函館線の現・渡島大野駅に位置する新函館北斗駅、八雲町春日に新設する新八雲(仮称)駅、函館線長万部駅の西側に併設する長万部駅、同じく倶知安駅に併設する倶知安駅、小樽市天神に新設する新小樽(仮称)駅、同じく札幌駅に併設する札幌駅の8駅の設置を予定している。

このうち、新青森駅から新函館北斗駅の区間は、2016年3月末の開業が予定されており、新函館北斗駅から札幌駅の区間は12年に認可・着工され、35年度までの開通に向けて工事が進められている。

◆延伸本格化への第一歩/村山トンネル着工

 7月8日には、札幌延伸本格化への第一歩となる村山トンネル工事が開始された。トンネル延長は5265m×9.5mでNATMによるベルコン方式でのショートベンチカット工法で掘削する。工期は21年8月4日までを見込んでいる。施工は、岩田地崎建設・熊谷組・不動テトラ・相互建設JVが担当する。

村山トンネルの安全祈願式
安全祈願式には、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の金山洋一北海道新幹線建設局長、北海道渡島総合振興局の宮内孝局長、北斗市の高谷寿峰市長、北海道旅客鉄道の安藤健一函館支社長らが出席。施工者である岩田地崎建設の岩田圭剛社長は「札幌に向けての初弾工事として道民の期待も大きい。北海道のゲートウエーとしての未来を担う工事だ。強い使命感を持って取り組む」と決意を述べている。

カウントダウンモニュメント除幕式
北海道では、新幹線がもたらす効果を北海道全体に広げていくために「オール北海道」で開業効果を高めるさまざまな取り組みを行っている。12年には開業への考え方や方向性を示した「カウントダウンプログラム」をとりまとめた。それに沿って13年3月に官民の連携・協働による幅広い分野のメンバーからなる「北海道新幹線開業戦略推進会議」を設立した。北海道商工会議所連合会、北海道経済連合会、北海道観光振興機構などで構成するそれぞれの戦略部会が首都圏、東北地方へのキャンペーンの展開や、交通ネットワークの今後の見通しに関する調査研究、カウントダウンイベントなどに取り組んでいく。北海道庁1階にはカウントダウンモニュメントが設置され、開業までの日時を示している。

◆ニーズ調査し商業展開/アクションプラン

 このほかにも、NPOやまちづくりグループなどが主体となり展開される取り組みについても事業運営やノウハウの提供、資金面でのサポートなどの支援活動に協力、取り組みによっては、新たな地域ブランドづくりや特産品づくりなど、市場やニーズを調査し商品開発や観光キャンペーンなどを企画・立案・展開しアクションプランを策定していくとしている。
 これまでも道南地域と青森県は1988年の青函トンネルの開業を契機に「青函インターブロック交流圏構想」に基づき各種施策が進められてきたが、開業によってこれまで在来線で1時間50分かかっていた函館~青森間が約30分で結ばれることになり、人・物の流れが飛躍的に進み青函地域は新たな地域生活経済圏となることが期待されている。

◆地域間交流が増加/連携図り観光振興

 また青森以外の東北、北関東地域とのアクセスも大幅に改善され、観光需要やビジネス交流など幅広い分野で地域間交流が増加する。06年に設立された北海道・東北6県と新潟県の知事および経済団体の長からなる「北海道・東北未来戦略会議」では、今後、北海道と東北地域への観光客増加に向けた広域観光事業など、新幹線開業を契機とした観光振興に向けてさらに連携を図っていくこととしている。 

札幌延伸は財源の問題もあるが、地方活性化のためには優先されるべき社会資本投資といえる。経済効果も非常に高く札幌までの延伸は最低限求められる。北海道新幹線開業は、道民が便利になるだけでなく、東京や大阪などから人々が北海道に来るために使うようになり、日本全体の地域・国土開発を進めることが目的となっている。特に東北と北海道の結びつきが強くなり、仙台、青函圏、札幌と大都市が核となって人が動くことによって、北海道を含む北日本はさらに発展すると期待される。積極的なPR活動、プロモーションを通じて北海道はさらに広がりを見せていくことになるはずだ。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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