2014/08/21

【ビッグプロジェクト】横浜市庁舎建て替えにDB導入! 山下PMCが挑む次世代産業モデル

新たな建築生産システムのメルクマールとなるプロジェクトが横浜市で動き始めた。約14万6800㎡の横浜市庁舎の建て替え事業に山下ピー・エム・コンサルタンツ(山下PMC、川原秀仁社長=写真左)が発注者支援の役割を担い、事業のスケジュールやコスト管理といった基本構想から関与する。技術者不足を背景に公共建築におけるコンストラクション・マネジメント(CM)や発注者支援のニーズが高まる中で「国立競技場に次ぐビッグプロジェクト」(川原社長)と位置付ける今回のプロジェクトにおけるプロジェクト・マネジメント(PM)会社の役割とは何か、今後の方向性を聞いた。
 横浜市は市庁舎の建て替えに際して工期短縮を目的に設計・施工一括方式(デザインビルド=DB)を導入する方針を掲げ、事業準備支援業務の委託者として山下PMC・山下設計JVを選定した。今年度中に発注方式などを策定し、2015年度中の設計・施工者の発注、19年末の完成を目指している。

現在の横浜市庁舎(photo:Wiiii) 
「設計・施工一括方式の庁舎建て替えという前例のないプロジェクトにどんなやり方があり得るのかが問われている」と語るのは今回のプロジェクトを担当する木下雅幸取締役執行役員事業推進本部長(写真右)。「従来の設計者・施工者・発注者の関係が変わろうとしている。設計者の良いところ、施工者の良いところを上手く融合し、日本の次世代の産業モデルを構築したい」とし、文化的な影響も踏まえた新たな仕組みを生み出す重要性を指摘する。
 具体的な発注方式や事業の進め方などは今後の市との協議で決定していくが、ニーズの変化を踏まえた内容となる見通しだ。川原社長は「われわれが参画することで、どういった付加価値を提供できるのかが重要だ。合理的に、受発注者全体の効率を高めるような役割を担いたい」と強調する。初めての取り組みだからこそ、建築生産のあり方をゼロベースで考え、いまの建築市況を踏まえた発注方式を検討したいとの考えを示す。
 また、木下氏は事業の効率性に加えて「ものづくりの楽しさ」にも注目する。「本来ものづくりは楽しいはず」とした上で、「日本の建設産業にかかわる方々の良いところを取り込むため、設計者も施工者も発注者も楽しさを提供できるような仕組みを生み出したい」と意気込む。
 その仕組みづくりによって「設計者があるべき姿を形にする力と技術的な知見を生かし、施工者は設計者が思った以上のものを形にする。それぞれの力を存分に発揮し、自分たちのプライドを込めた仕事ができる」とも。
 改正公共工事品質確保促進法(品確法)を背景に、公共建築の発注方式は今後さらに多様化する可能性が高まっている。木下氏は「建築生産の手法はいろいろなものがあって良い」とした上で、「建築市況が変化し、改めて建築生産を考える時期が来た。決まったやり方を繰り返すのではなく、なにか新しいやり方に挑戦し知恵を絞ることが、日本の建設にかかわるポテンシャルを生かした新しい価値が生まれるのではないか」と提起する。
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