2014/08/23

【BIM】部門横断チームで多角的に検討、導入1年で手応え 千都建築設計事務所

千都建築設計事務所(本社・千葉市)は、ユニークなチーム編成で、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)活用を急速に推進している。写真は実施設計までBIMで挑戦した幼稚園。
 2012年8月のBIM導入当初は、4つの設計部から1人ずつBIM担当を選任し、その上に統括者を置いた部門横断的なBIMチームを編成。まずは4人が分担して▽実施図の基本的な作成方法▽詳細図などの描き込み▽家具などのオブジェクト▽CG・レンダリング--について研究した。

設計4部門に1人ずつ得意分野の異なるBIM担当を配置
その結果、各部の担当者が、それぞれ異なる得意分野を持ち、分からないことがあれば、部門を超えて助け合う体制が構築された。「複数人のBIM担当がいることで、多角的な検討も可能。担当者1人当たりにかかる負担も少ない」と、チームの1人、吉田真也設計主任は分析する。
 こうした推進体制が下支えとなり、同事務所のBIM導入スピードは驚くほど速い。導入後4カ月で過去の物件を使って試行、半年で実案件の外観比較検討、1年で確認申請、1年3カ月で実施設計まで取り組み始めた。
 「最初は実務に使えるのか疑心暗鬼だったが、社内に浸透する予感は初期段階からあった。いまではクライアントとの打ち合わせで重宝しており、作図にも実施設計で使える手応えも感じている。事務所内に関心を持つ人も増えた」とは、田邉俊和設計主任。ウオークスルー、日影解析、概算などの機能を駆使する。

2Dと3Dの2画面で打ち合わせ
使用するBIMソフトは『GLOOBE』。「仕上げ材などの細かい設定が可能なほか、平面・立面・断面の各図が連動し作図効率が向上している」と大石聡設計主任。できるところまでBIMで進め、途中からJW-CADに移行することも可能だ。
 従来は業務時間の2割がデザイン、6割が作図チェックだったが、BIMの活用で「5割がデザイン、3割が作図チェックになった。BIMは業務改善に貢献し十分な利用価値がある」と池田好剛設計課長は断言する。
 こうした取り組みの輪をどう社内に広げていくか。ことしは新たに5人をBIMチームに加え基本設計に生かせるレベルまで引き上げ、所員55人中10人の体制にする。総合事務所の強みを生かし、意匠と構造・設備・環境解析の連携が次のステップとなる。
 将来的にBIMは「発注者から設計事務所、ゼネコン、サブコン、メーカーまでの障壁を取り払い、スムーズな建築生産の流れをつくっていく」と、田中明夫専務取締役設計本部長は見据える。「1社では建築生産を変えられない。多くの皆さんと一緒に進めていきたい」と展望する。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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