2014/08/28

【公開シンポ】国際競争力求められる大学キャンパス 学内建築を発信せよ

日本の大学ではキャンパス整備に多額の投資が行われているにもかかわらず、歴史的な重層化に必ずしも成功していないと指摘されている。国際競争力のある魅力的な大学キャンパス整備に何が求められているのか。日本学術会議土木工学・建築学委員会は22日、公開シンポジウム「我が国の大学等キャンパスに国際競争力はあるか」を東京都内の日本学術会議講堂で開き、建築家の仙田満委員長を始めとする多くの専門家が参加し大学キャンパスの未来を語り合った=写真。

 建築家の香山壽夫氏は「『キャンパス』とは何か-その歴史的意味と今日的課題-」と題して基調講演し、国内の大学キャンパスの印象について「教育、研究の施設は良いが、キャンパス全体は雑然として騒がしく活気もない」と指摘。建物を建設する一方で、大学の個性や特色が生み出されない現状を批判した。「歴史的に見れば、大学の基本は教師と学生の共同体であり、キャンパスとは都市の中の『空地』だった」とし、大学キャンパスの本質は活発な議論と静かな思索を受け入れる広場にあるとした。

その上で「日本では、大学キャンパスのシンボルは並木道、講堂、時計塔の3要素で構成し、生活空間ではなく権威の象徴としてキャンパスが整備されてきた」と語り、「拡張・変革ではなく、定着・連続を重視すべき」との考えを示した。

京都大学の時計台
また、芝浦工大の南一誠教授は建築系の教育に取り組む全国の約100大学を対象に実施したアンケートの結果を報告。キャンパス整備におけるマスターアーキテクトや大学キャンパス整備室による中長期的な一貫性のある整備計画が機能していない現状を示した。一部の国立大学を除く多くの大学が国際競争力の不足を自覚し、危機感を抱えており「これまで以上に海外の学生を受け入れるためには、学生と教師がともに学び生活する学寮のような居住環境の整備や地域とのつながりが不可欠になる」と語った。
 これを受けて香山氏も日本の大学が抱える課題として「キャンパスツアーやガイドブックを通じて大学キャンパス内の建築を紹介するという文化がない」点を挙げ、「大学の魅力を大勢に知らせることがキャンパスの価値や評価につながるのであり、大学として知見を積み重ねる必要があるだろう」と述べた。
 パネリストらの議論を踏まえ、これまでに多くの大学で教鞭を取った仙田委員長は「資源のない国では人の知的生産性が重要になる。魅力的なキャンパスをつくり、アジアや世界から留学したいと思える大学づくりに取り組むことで、大きなリターンも期待できる」と強調し、大学の施設部と建築学科が連携する重要性を指摘した。
 さらに大学キャンパスを変えるには「大学とはなにか」を絶えず議論し、「設計者の設計理念や設計姿勢を明確化した上で広場や通りといった大学キャンパス内部のオープンスペースをどうつくるかが大切」と提起した。
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