2016/10/30

【東北建築学生賞】最優秀賞は岩渕風太さん(東北大)の『こもれびあじと』 JIA東北


 日本建築家協会(JIA)東北支部(鈴木弘二支部長)は20日、仙台市青葉区のせんだいメディアテークで第20回を記念するJIA東北建築学生賞の公開審査および表彰式を開いた。最優秀賞には、岩渕風太さん(東北大3年)の『こもれびあじと』=写真=が選ばれた。

 同賞は、学校の枠を超えた建築系学生間の交流、建築教育の情報交換の場を提供し、建築文化の向上に寄与することを目的に1997年に創設した。今回は、東北各地の大学や高専、専門学校など13校15学科から計36作品の応募があった。
 審査は、同賞を企画したJIA宮城の針生承一氏(針生承一建築研究所主宰)を員長に、東北各県の地域会メンバーや賛助会らの代表者10人のほか、特別審査員として、第1回で最優秀賞を受賞した建築家の藤野高志氏(生物建築舎代表)が担当した。
 公開審査では、制作者によるプレゼンテーションを踏まえ、▽コンセプトの導き方▽社会性・歴史性▽空間性▽表現力--の4項目を中心に評価し、各審査員の投票で入選作品を選定した。
 最優秀賞の『こもれびあじと』は、仙台市青葉区の西公園内にひっそりとたたずむ“ひみつきち”をイメージし、地下1階地上1階建てで7.5mキューブ内の空間に貫入と貫通、内包などの位相構成と、反射と屈折、拡散などの光の現象を組み合わせた、子どもたちが楽しめる光の小規模ギャラリーを提案した。
 内部は、木の枝と根をモチーフにした大小さまざまな三角形の壁が連なる構造体で構成。ファサードには強化ガラスにクラッシュガラスを使用することで、木漏れ日のようなやわらかな光を演出する。

受賞者と各審査員ら

 表彰式では、最優秀賞を受賞した岩渕さんに鈴木支部長と針生員長から、第20回を記念して制作した第1-7回で贈呈していた当時の復刻版の盾などを手渡し、栄誉をたたえた。
 この後、針生員長が「良い作品は、どうしようもないほど自分を追い詰めていかないと出てこない。皆さんには、法律や構造、材料などいろいろな知識を学んでほしい」と総括。その上で、「提案型でピュアな建築家であり続けてほしい」と語った。
 鈴木支部長は「建築家には、多様性が求められる時代になってきている。頭をやわらかくして、時代に追従できる建築家になってほしい」と建築家を志す学生たちにエールを送った。

 最優秀賞を除く入賞作品は、次の通り(敬称略)。
 〈優秀賞〉
▽森のとしょかん=伊藤春樹(東北芸術工科大)
▽ヤナギウの繭=小野寺謙(仙台高専)。

 〈みやぎ建設総合センター賞〉
▽連続と交錯-記憶と理想の架け橋-=伊藤和輝(日大)。

 〈東北専門新聞連盟賞〉
▽Green hills=石田愛実(宮城学院女子大)、伊藤麻希(同)、佐藤彩香(同)
▽宿工房-ある人の帰還-=渡部昌治(日大)。

 〈河北新報社賞〉
▽Street Library通りの図書館~ナレッジコミュニティで集う~=五十嵐愛美(宮城学院女子大)。

 〈特別賞〉
▽帯の学校=山木兼(東北学院大)
▽DESIGN BOX PULSE=小島みのり(宮城大)
▽本荘文庫=土井美春(秋田大)。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

Related Posts:

  • 【京女×鹿島】京都女子大新図書館のアイデアコンペ 最優秀は「卵型個室」の提案  京都女子大学と鹿島は19日、京都市東山区の同大学で新図書館新築工事のアイデアコンペを開いた。新図書館1-2階のカフェに設置してほしい機能について学生がプレゼンテーションした。化粧室の設置など女学生ならではの要望が多く、松田康史工事事務所長は「大変参考になった。できるところは工事に反映していきたい」と話した。写真は最優秀賞を受賞したDグループと林忠行学長。  同コンペは、新図書館を建設するに当たり学生の意見を反映するために4月から開始し… Read More
  • 【UIA-HYP Cup2015】最優秀賞は佐野勇太さんの「SHIBUYASCAPE」 天津大ら主催の学生コンペ  中国の天津大学などが主催するUIA公認学生コンペティション「UIA-HYP Cup2015」で、メルボルン大学で建築デザインを学ぶ佐野勇太さんが最優秀賞を受賞した。「UIA-HYP Cup2015」は「トランスフォーメーション(変形)」をメーンテーマに掲げ、世界各地から文化、地形、景観、気候などに言及した提案を524組が応募した。画像は佐野さんの作品「SHIBUYASCAPE」。  佐野さんの作品「SHIBUYASCAPE」は、東京・渋… Read More
  • 【大学整備最前線-1-】都市同様、全員参画で整備! 立命館大 茨木新キャンパスの完成イメージ 人口の減少や少子高齢化が進む中、大学を取り巻く環境は厳しさを増している。し烈な大学間競争に打ち勝つため、魅力的なキャンパス整備を重視する大学は多い。都心回帰の流れに加え、付属校や学部新設の動きも活発化している。関西の主要な大学に対して、施設整備の現状や今後の構想などを聞いた。 ◇13年度内に基本計画たたき台 立命館(京都市中京区)は、2012年にキャンパス計画室を新たに設け、初代室長に及川清昭理工学部教授が… Read More
  • 【公開シンポ】国際競争力求められる大学キャンパス 学内建築を発信せよ 日本の大学ではキャンパス整備に多額の投資が行われているにもかかわらず、歴史的な重層化に必ずしも成功していないと指摘されている。国際競争力のある魅力的な大学キャンパス整備に何が求められているのか。日本学術会議土木工学・建築学委員会は22日、公開シンポジウム「我が国の大学等キャンパスに国際競争力はあるか」を東京都内の日本学術会議講堂で開き、建築家の仙田満委員長を始めとする多くの専門家が参加し大学キャンパスの未来を語り合った=写真。  建築家の香… Read More
  • 【大学整備最前線】125周年事業で3施設整備へ 関西学院 125周年記念講堂 2014年9月に創立125周年を迎える関西学院は、記念建設事業として125周年記念講堂などの施設整備を進めている。主力の西宮上ケ原キャンパス(兵庫県西宮市)は、もともと米国出身の建築家であるウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計、関西屈指の美しいキャンパスとしても知られる。吉松千博施設部長は「景観や建物は関西学院の財産。これを守り続けることが学院のポリシーにもつながる」と強調する。  関西学院が記念事業を行うのは111周… Read More

0 コメント :

コメントを投稿