2013/07/20

【回転ドア】「本当の性能を知って欲しい」 国内唯一の販売元に聞く

「少し増えてきたとはいえ、出荷状況はまだ年5台のペース」と説明するのはブーンイダムジャパン(東京都港区)の中原博社長だ。2004年3月に六本木ヒルズで起きた事故以来、回転ドア市場は一気に冷え込み、現在の日本市場では同社が唯一、販売実績を積んでいる。この9年間で33物件40台を納入した。
 1990年代には建築の大型化に伴い、回転ドアが普及し、ピーク時には業界全体で年間100台規模で設置された。全国自動ドア協会によると、事故後に使用中止や撤去されるケースが相次ぎ、現在使われている大型の回転ドアは全国に240台程度しかない。


ストックヤード
◇風対策に有効

 中原社長は「いま依頼されるのは、本当に回転ドアの性能を理解してもらったものばかり」と強調する。ことしに入って納入した建築物5件中3件は改修工事だ。5月に設置が完了した長野中央病院のように「特に病院建築では玄関部分に採用していたスライディングドア(引戸)を回転ドアに取り替えるニーズが目立っている」という。
 要因は、風対策だ。病院のプランニングでは1階入口に待合室を設けるケースが多く、自動ドアでは出入りのたびに室内に外気が入り込む。回転ドアの設置によって、開口部からの風量はスライディングドアの約10分の1に低減できる。「(施主は)お年寄りや風邪をひいた方々を気遣い、回転ドアの設置を決めている」。この9年間で納入した40台のうち、改修案件は全体の4分の1を占めている状況だ。


海外向けには年間1600台を納入している
◇ドラフト現象

 一方で回転ドアを撤去または使用停止した建築物の中には、ドラフト現象が発生している案件も少なくない。特に1階から屋上までをエレベーターシャフトが貫くような高層建築物では回転ドアがなくなることで、上下階の気圧差が生じやすく、ドアの開閉に影響を及ぼしやすい。
 世界に目を向ければ、同社は年間1600台もの回転ドアを各国に納入している。需要が拡大しているのは中国で、年200台を数える。日本の設計事務所やゼネコンからは海外プロジェクトで回転ドアを使いたいと相談が寄せられることも多い。日本国内では需要が少ないこともあり、問い合わせの半分は海外案件が占める状況だ。
 同社は当面の国内受注目標として、年10台を目安に位置付けている。設計者の中には回転ドアの性能を理解し、建築提案の選択肢に盛り込むケースが少しずつ増えているが、なかなか採用には結びつかない。中原社長は「市場ではまだ、回転ドアに対する建築主側の心理的な影響が残っている」と感じている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年7月17日

Related Posts:

  • 【清水建設】軽く!涼しく! 井上社長も太鼓判の空調服と新型ヘルメット導入  清水建設は今夏から、通気性に優れ軽量化を図った「新型ヘルメット」と、体温上昇を防ぐ「空調服」を全面的に採用する=写真。「少しでも働く環境を改善していきたい」(井上和幸社長)との思いから、全国の現場に順次導入することを決めた。 発泡スチロールを取り除き、衝撃吸収機能を付加した固定用ライナー 新型ヘルメットは、保護具メーカーの谷沢製作所と共同で開発。個人の頭の大きさに合わせる固定用ライナーに衝撃吸収機能を付加し、ヘルメットの内側を覆… Read More
  • 【出前授業】OB3人も指導に! 盛岡工高で「ビルド学校」、男女40人が受講  竹中工務店グループ専門工事会社の東京朝日ビルド(本社・埼玉県草加市、八木潤一郎社長)は1日、岩手県立盛岡工業高校で「ビルド学校」と名付けた出前授業を行った。昨年の福島県立会津工業高校に次いで2度目の開講。  今回受講したのは、建築・デザイン学科の男女40人。東京朝日ビルドの社員9人が講師となり、現役の鉄筋工、型枠工が地組みや建込みを実地で教えた。社員には同校OB3人も含まれており「どんなことでも乗り切って、辞めないで建設業を続けてほしい… Read More
  • 【東光電気工事】高所恐怖を克服せよ! 新人6人が高さ18mの送電鉄塔に挑む  東光電気工事は6日、千葉市の東京電力千葉総合訓練センターで、新入社員研修を行った。架空送電線工事に従事することになる6人が参加し、高さ18mの送電鉄塔を昇り降りするなどし、実際の現場で必要不可欠な高所恐怖の克服に挑んだ。  昇塔訓練に臨んだのは、送電線事業部に所属する3人と新エネルギー事業部の2人、協力会社である東光送電工事の1人。現場の職長に当たるベテランの電工班長が指導した。  訓練は入社後に約半年かけて行われる新入社員研修の… Read More
  • 【鹿島】求人情報ページがスマホ対応に! 協連と連携、情報を見つけやすく  鹿島は、協力会社組織の鹿島事業協同組合連合会と連携し、若年層の技術者・技能労働者を確保するためのスマートフォン向け求人情報ページを新設した=写真。多くの若者が利用するスマートフォンで見やすいようにウェブサイトを刷新し、建設業界への興味や関心・理解を深めてもらう。  建設業界への若年入職者が年々減少する中、組合員各社から採用活動支援に特化したウェブサイトの開設を求める声が多数寄せられ、2015年10月に同協同組合のホームページを開設。さら… Read More
  • 【現場見学会】隣の現場は何してる? 蔵前工高生がマンション建設現場を見学  大京と穴吹工務店は7日、東京都立蔵前工業高校の隣接地で進めている「(仮称)台東区蔵前1丁目計画新築工事」で、同校の建築科1年生35人による現場見学会を開いた=写真。  冒頭、同校建築科の米川誠次主任教諭は「毎日の通学時や校舎から隣の工事を観察したり、いまの状況を聞きに来る生徒がいる」ため、見学会を発注者の大京と施工者の穴吹工務店に要望したことを説明した。教室内で大京と穴吹工務店の担当者が、会社や事業、建築計画、工事の進捗状況と今後の予定… Read More

0 コメント :

コメントを投稿