2012/02/15

iPhone/iPad/androidでDWGデータを編集・共有 オートデスク「AutoCAD WS」

 オートデスクが提供する『AutoCAD WS』は、同社標準ファイル形式であるDWGの図面データを、スマートモバイルから自由に閲覧、編集、共有できる。インターネットを介して専用サーバーに保管された図面データにアクセスするクラウド型のモバイルアプリケーションだ。

 WSの原型は、そもそもイスラエルで商品名「バタフライ」として存在していた。同社が開発元のソフト会社をグループ傘下に納めた経緯があり、ユーザーが集う場で試験的にソフトを限定公開したところ大きな反響を得たことから、商品化に踏み切った。
 2010年8月にiPhone/iPad対応、11年4月にはアンドロイド版をリリースし、これまでに計420万ものダウンロードがあった。汎用CAD『AutoCAD』に対応しているため、建設に限らず、製造分野のユーザーにも活用されている。田中ゆかりマーケティングディベロップメントマネージャは「通勤時に建築図面をチェックする設計者も多く、その手軽さから出張に欠かせないツールとしても評価を得ている」と説明する。
 WSは既存図面データの活用を前提にしており、新規に作図することはできない。しかし、グーグルが提供するマップデータなどと連携させることにより、地図の上に図面を重ね合わせ、建築のボリュームを確認することも可能だ。2次元のDWGデータ形式に限定したことが、逆に連携をしやすくした。同社のプロジェクト管理ソフト『Buzzsaw(バズソー)』とも、手軽に図面を複数の人が共有できる点で差別化を図った。
 伊勢崎俊明デベロパリレーションマネージャは「WS最大の魅力はスマートモバイルがプラットフォームとなり、図面データ上で複数の人がリアルタイムに議論できる機能だ」と強調する。モバイルの画面には、登録した共有者のカーソルがすべて記され、相手がどこを指しているかが一目で分かる。
 図面データは縮小や拡大にもリアルタイムにリンクし、図面のポイントを絞って具体的な指示が出せる。チャット機能を使えば、ディスカッションも可能だ。対話の履歴は時間単位で追跡でき、過去にさかのぼって図面データも戻せる。共有権限を解除すると、自動的に指定したアドレスに履歴が送信される機能も付いている。「設計のワークフロー改革を後押しする、まさにリアルタイムコラボレーションツールと受け止めてほしい」(伊勢崎氏)。
 WSの共有データは2次元に限定している。近年はBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の普及を背景に、3次元データへの対応を求めるユーザーが増えている。クラウドサービスの一環としてシステムを維持しているため、機能更新にも対応しやすい。同社の開発チームでは機能強化を前提に、月1回のペースで新たなアイデアを出し合っている。

『AutoCAD 2012 and AutoCAD LT 2012 Bible』--AmazonLink

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