2014/10/27

【現場最前線】国内最深72mの発進立坑を掘削 JSの芝浦~森ヶ崎連絡管工事

前田建設工業・鴻池組JVが建設する深さ71.8mの立坑
日本下水道事業団(JS)は、国内最大深度まで掘削する立坑工事を行う東京都芝浦水再生センター・森ヶ崎水再生センター間連絡管建設工事現場と、MBR(膜分離活性汚泥法)の実用化実験を行う技術開発実験センターを公開した。
 連絡管建設工事は東京都下水道局から受託。発進立坑は前田建設工業・鴻池組JVが受託し深さ71.8mの立坑を構築している。この深度での掘進は「日本で最深度クラス」(菅井雅之日本下水道事業団関東・北陸総合事務所施工管理課主幹)といい、掘削する土量は2万1508m3に及ぶ。立坑の構築にはニューマチックケーソン工法を採用。1カ月に約5mずつ掘削していく。この立坑から連絡管を掘削するシールドマシンを発進させるため、最深部の断面にはシールドのカッタービットで切断でき、コンクリートの代替として利用できる炭素繊維のNOMSTを採用している。現在は24m付近まで掘削が進んでおり、2015年11月下旬に完成する予定だ。

 連絡管建設工事は公共下水道の区部では初であるというとなる。両方の水再生センターを連絡管で接続することにより、センターの再構築時に不足する水処理再生能力を、他のセンターで補完することが可能になる。また、地震などの災害時には水処理・汚泥処理のバックアップ機能を確保することができる。工事場所は東京都大田区東海。
 連結管は総延長約8㎞(内径6000mm)。シールド工事の連携管建設その2工事は鹿島・飛島建設・大本組JV、到達立坑となる同その3工事は飛島建設・鹿島JVが担当する。
 また、JSでは12年度から第4期公募型共同研究を実施しており、既存の合流式下水道施設へMBRを導入するための調査研究や、1m3当たり毎時0.4kW以下の省エネルギー化が可能な技術開発を目指している。栃木県真岡市の技術開発センターでは9区画の実験ヤードが整備されており、現在6者がMBR関連の研究を行っている。うち4者が第4期公募型共同研究の研究者となっている。
前澤工業・住友電気工業Gの実験ヤード

 MBRは孔径0.1-0.4マイクロm程度の精密濾過膜が用いられ、膜孔の閉塞を抑制するために曝気洗浄や薬剤洗浄が必要。この洗浄過程での消費電力が大きいことが課題となっている。前澤工業と住友電気工業のグループが研究する「PTFE製中空糸膜を用いたMBRの省エネルギー化に関する研究」では、散気気泡が中空糸内部に拡散しやすい構造を採用したことで、省エネルギー化を図った。また曝気洗浄以外の洗浄方法として、ダイセン・メンブレン・システムズの「新規平膜と機械的洗浄方法を用いた省エネルギー型MBRの開発」ではプラスチック粒子による機械的洗浄を採用。ラミネート加工で構造を強化することで膜モジュール厚2mmという薄さを達成し、高強度、高集積率を実現した平膜と合わせ、低消費電力のシステムを開発した。
 第4期公募型共同研究は遅くても15年度までに終了し、16年度に第3次MBR技術評価をまとめ、開発された新技術の確立を図る考えだ。

Related Posts:

  • 【復興現場最前線】1年で劇的変化した三陸沿岸道路を現地リポート まちづくりなどの事業の一部で、復興の速度が遅いとの指摘がある一方、復興へのリーディングプロジェクトに位置付けられ、異例のスピード感を持って事業が進められている三陸沿岸道路。東北地方整備局南三陸国道事務所が所管する釜石山田道路・大槌地区現場の1年前と今を見比べながら、“スピード感”あふれる現場力を報告する。 伐採木が集積され、斜面に重機が張り付き整地していた急斜面からは吉里吉里側坑口が見える 2013年7月。地元の佐々木組が施工す… Read More
  • 【現場最前線】オペレーターの妙技が支える 既設ボックスカルバート拡幅工事 東京メトロ有楽町線の小竹向原駅と千川駅の間で、地下に設置済みのボックスカルバートを拡幅するという珍しい工事が進行している。佐藤工業・熊谷組・大日本土木JVが施工を担う有楽町線小竹向原・千川間連絡線設置向原工区土木工事は、有楽町線と副都心線の平面交差を解消するため、ボックスカルバートを拡幅し、新たに連絡線を設置する。営業線近接工事のため施工上の制約は少なくないが、工期短縮に向けた創意工夫を随所に織り込んでいる。  小竹向原・千川駅間では、有… Read More
  • 【現場最前線】新校舎で卒業式を! 子どもらの応援受け現場団結 福島の鏡石第一小改築 東日本大震災から3年が過ぎた、ことし3月20日、校舎が被災しプレハブの仮設校舎での生活を余儀なくされた福島県鏡石町立第一小学校の6年生112人が約2カ月前に完成した新校舎で卒業式を迎えた。施工に当たった仙建工業の山田耕司所長は、「『6年生を新校舎から卒業させてあげたい』との想いが現場を結束させ、工期内の完成にこぎ着けられた」と振り返り、児童の晴れがましい姿を観覧席から温かく見守りながら、「卒業生は復興の希望であり、何よりも(新校舎からの卒業… Read More
  • 【現場最前線】ヘルメットの色で役割を「見える化」 大林JV作業所の取り組み 大阪のメーンストリート・御堂筋に面して立つ「日本生命本店本館」。現在の日建設計の前身である長谷部竹腰建築事務所が設計を手掛けた、御堂筋沿いでは最も古いビルの1つだ。その本店本館から心斎橋筋を挟んだ東側で、大林組・竹中工務店JVの施工により「(仮称)日本生命新東館」建設が進む。同現場の林忠利工事事務所長を始めとするJV職員は「作業員が、長期にわたって仕事を行う上で、快適かつ安全に過ごしてほしい」との思いを込めて職場環境の向上に努めている。その… Read More
  • 【CIM】外環千葉区間でも3次元を活用 清水建設の高谷IC改良工事 土木構造物のライフサイクル全般で効率化に貢献するCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)。今後の本格的な普及が見込まれているが、公共事業の効率化という観点からも導入効果に対する期待は大きい。国土交通省関東地方整備局が発注し、清水建設が施工する東京外環道「高谷IC改良その6工事」(千葉県市川市)もCIMを導入している現場の1つ。どのような導入メリットがあり、今後の普及に向けた課題はどこにあるのか、現場を取材した。  この工… Read More

0 コメント :

コメントを投稿