2013/05/22

【BIM】現実とのギャップ埋める SGカンファレンスinロンドン

ある班(クラスター)は、建設地を多角的に解釈するための新たな手段を求め、ヘリウムガス風船にセンサーを取り付け空に放った。また別の班は、直線的でない造形を生み出す新たな手段を求め、かつてガウディが麻紐の中央に散弾袋を付け垂らし曲面を求めたように、複数のロボットアームに糸状の泡を引っ張らせた。
 スマートジオメトリー(SG)2013ロンドン大会のワークショップ会場では、多くの建築家たちが、4日間という制限時間の中、大会テーマである「Constructinig for Uncertainty(不確実性を踏まえた設計・施工)」という難題に挑んでいた。
 たとえば、将来にわたる街の変化をどう予想し設計と関連づけて考えればよいのか。
 この検討に確率論から迫った班は、道路網との関係から許容される最大容積かつ日射との関係から表面温度が最小となるような建築群を、ベントレー・システムズの生成的設計ツール「ジェネレーティブコンポーネンツ(GC)」などを使って生み出した。


◇ディシジョンツリー

 戦略論から都市の変化を想像した班は、GCなどを使い、街全体が持続可能性や環境上のレジリエンスの観点から最適化するような、個々の土地活用におけるディシジョンツリー(決定木)を作成した。
 では、将来予測の上に構築した個々の建築のデジタルモデルと、完成後の姿や数十年後のニーズとのギャップをどのように解消したらよいか。
 将来の周辺環境の変化に適応可能な建築を思索した班は、規模を縮小したり、折りたたみ運んで再利用できるような、伸縮可能で耐荷重性のあるファサードをGCで生成。アルミとプラスチックを使って実物モデルを製作してみた。
 シミュレーションの正確さを目指した班は、GCなどで多彩なファサードモデルを生成し、それぞれ温熱解析にかけた上で、各モデルの実物パネルを製作、ランプで熱照射し、結果を解析と比較した。

◇拡張現実

 完成前の不確定要素として、作業員の熟練度に注目した班は、拡張現実(AR)技術を使い、薄いヴォールト構造の造形物を、建設中も自立させながら誰でもつくれるように、パーツ分けしGCなどでモデル化。センサーとプロジェクターで製作を指示し、自分たちの手で具現化してみせた。
 バーチャルに純粋培養されるアイデアや建物を、不確定要素の多い現場や予見不能な将来に耐えられるものに具現化する。こうした建築家の命題も、脳内の案やモデルをいったんデジタルにすることで、多くの知恵とテクノロジーを集め、協力して解を探せるようになっている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年5月22日

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