鶴田ダム再開発事業を進める九州地方整備局川内川河川事務所は18日、放流管の増設に向けたダム堤体の削孔工事に着手した。ダム再開発事業の中で、設計水深65m、5本の削孔数、削孔の長さ60mは、いずれも国内最大規模だ。メーン工事の着手で現場は最盛期を迎えている。
事業は、洪水被害の軽減を図るため、洪水調節容量を最大7500万m3から最大9800万m3に増やす計画で、現在より低い位置に放流管3本を新設する。これに伴い既設の発電管2本を付け替えるほか、法面掘削、減勢工の増設、既設減勢工の改造などを進める。2007年度に着手し、完成は15年度内を予定している。
削孔工事は、放流管が6m四方、発電管は6.4m四方で、先行して放流管2本と発電管1本を整備する。トンネル工事などで使用する自由断面掘削機を使い、1日30cm程度で掘り進む予定だ。
◇掘削機始動
18日の工事着手に当たって、川内川河川事務所の足立辰夫所長が合図し、掘削機を始動させた。施工は鹿島・西松建設JVが担当し、高度技術提案型総合評価落札方式を採用している。
削孔工事の着手に当たり、これまでに、クレーンなどの作業スペースを設け、上流側に仮締切を設置した。水中施工では施工最大水深が65mに及ぶため、飽和潜水作業を実施。潜水士には作業水深と同じ気圧の居住空間で生活しながら作業し、作業終了後には3日間の減圧期間を設けた。ダム工事での飽和潜水作業は過去に例がないという。
仮締切では、台座コンクリート以外に、新工法となる浮体式仮締切を1カ所で実験的に採用した。台座の上に組み立てる従来工法と違い、浮き上がり防止金物を付けて、上からぶら下げるもので、コストや工期の縮減になる。
◇11月にも貫通
削孔は11月にも貫通する見込み。貫通の際は、堤体に振動を与えないようにワイヤソーで切り取り上流側から最後のコンクリートを抜き取る。その後、制水ゲートを設置し、仮締切を撤去、堤体内に水を放流する管を設置する。残りの放流管・発電管も同様の工程とスケジュールで施工する。
鶴田ダムは、鹿児島県さつま町にある重力式コンクリートダムで、諸元は堤高117m、堤頂長450m、堤体積111万9000m3、総貯水量1億2300万m3となっている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2013年5月21日
0 コメント :
コメントを投稿