2013/05/27

【情報化施工】「入札加点材料じゃない」 東北復興に生かせ! 岩沼講習会ルポ-3-

講習会で募ったアンケート調査には、情報化施工への期待として「工期短縮」「施工効率化」「熟練技術者不足への対応」を上げる声が目立った。東北では、かつてないほどの広域で、多数の工事発注が出ているため、効率の良い施工と熟練オペレーター不足への対応が求められている。
 例えば、3次元マシンガイダンス(3DMG)のバックホウは、設計図面を重機に読み込ませておき、GNSS(全地球衛星測位システム)による座標と組み合わせて構築する法面の形状をオペレーターに指示できる。


◇ミリ単位の施工精度
 3次元マシンコントロール(3DMC)のブルドーザーは、設計図面に書かれた形状に従って排土板を自動で動かしミリ単位の施工精度を確保する。仕上げ段階では、オペレーターは重機を前後に動かすだけでよい。オペーレーターの経験はあるに越したことはないが、経験不足を補う力を持っている。
 ある受講者は「建設業は、他産業に比べて労働時間が長いが、このような技術で短縮できる可能性がある」とアンケートに書き込んだ。「復興工事以外でも使いたい」という受講者もあった。
 情報化施工のメリットは、合理化や品質向上、工期短縮、プロセス管理といった部分に力を発揮する。これは発注者から受注者までが共通して得られるものだ。
◇メリットの周知
 一方、もっと周知されるべきメリットは「利益に結びつく」ということだ。ある道路会社では、民間の駐車場施工などに取り入れ、従来よりも少人数、短工期で、従来より高い品質の工事を行っている。利益率も高い。ある地場建設会社は、公共工事で短工期を実現し、隣接工区の工事も受注した。
 米国では監督者側も、GPS(全地球測位システム)ローバーを使って現場を抜き打ち検査する。限られた人員で多くの現場を検査・監督できるツールとして使われている。
 情報化施工は入札時の加点材料ではなく、知恵を使った者こそが利益を生み出せるツールなのだ。
 今回の講習会を企画した復興ワーキンググループは、月に1、2度、東京・芝の機械振興会館の会議室で定期的な会合を重ねている。官民を問わず意志を持つ人たちで構成された有志グループが、自由闊達な意見交換で新たなアイデアを生み出していく。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年5月27日

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