東京都江戸川区は東部に江戸川、西部に荒川、中央部には新中川、南部は海と、水に囲まれた立地である。これまでにも出水被害をたびたび受けており、多田正見区長も「江戸川区はカスリーン台風(1947年)、キティ台風(49年)などによって大きな被害を受けてきた。今後も、水に備えた防災対策を続けなければならない」と強調する。
江東、墨田、足立、葛飾区など荒川を挟む区は低湿地帯が多い。特に江戸川区は、満潮時海抜ゼロメートル以下の地域が区内の70%を占め、このうち26%は干潮時海抜ゼロメートル地帯だ。そのため、区はこれまでも高台の確保、堤防強化、橋梁の補強などの都市基盤整備に取り組んできた。
区域のほとんどで浸水の恐れがあるため、区域南端の海沿いにある葛西南部地区、江戸川を隔てた千葉県市川市の国府台台地、荒川を隔てた大島小松川公園の3カ所を地域防災拠点として想定している。しかし「対岸へ避難するためには荒川か江戸川を渡る必要があるが、その両川に架けられた橋は少ない」と指摘。特に江戸川に架けられた橋は数が限られているため「橋梁の増設・耐震化や避難の分散」は喫緊の課題との認識を示す。
◇長期的に大規模対策
区内の避難場所を増やすため、篠崎公園21haを高台化し、避難者22万人を受け入れる一時避難場所を整備する計画が都施行で進んでいる。また北小岩地区1.4haと篠崎公園地区8.2haでは、街区全体をかさ上げした上で行う、国が推進するスーパー堤防と土地区画整理を一体的に整備する沿川まちづくりを計画している。「大規模な防災対策は構想から数十年かかることもある。できるところからできる時に、長期的な視野で進める」方針だ。
◇区内業者に大きな期待
区内建設業者に対する期待も大きい。「発災時には区・警察・消防などと協力して災害対策本部を立ち上げるが、本部だけでは限界がある。装備・技術のある区内建設業者の協力は不可欠だ」と力を込める。
区は現在老朽化した学校の建て替えも積極的に進めているが「新しい学校には防災的な機能を持たせ、地域の防災拠点としての役割を果たしてもらいたい」と語る。その上で「工事はなるべく区内業者にやってもらいたい。建設するだけならどこの企業でも良いかもしれないが、地元業者はいざという時に頼りになる」とも。
◇社会的総合評価も
同区では区内業者の活用などを目的に、大型工事の際には一般競争入札だけでなく、災害対策等に関する地域貢献度などを評価する「社会的要請型総合評価方式」を導入。区内業者でも受注できる環境を整えている。
学校改築に必要な費用は1校当たり約30億円。学校の再編を実施した上でも、今後20年間で70校程度は建て替える見込みだ。「総額2000億に及ぶ工事が長期にわたって続き、付随する仕事も継続的に出てくる。区内業者が力を付ける絶好のチャンスになる」と見据え、地元建設業の活性化とそれを核とした区内の産業振興にも大きな期待を込める。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年5月13日
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