日本建築家協会(JIA)近畿支部(小島孜支部長)の第8回関西建築家新人賞の受賞者に、『高野山ゲストハウス』の竹口健太郎氏と山本麻子氏(ともにアルファヴィル一級建築士事務所)、『摂津本山のデンタルクリニック』の宗本晋作氏(宗本晋作建築設計事務所)が選ばれた。
16日に大阪市内で開かれた会見で竹口氏は「設計のチャンスが少ないわれわれの世代にとって、海外にもアピールできるいいきっかけをいただけた」と喜びを語った。宗本氏も「この受賞は自信につながる」と述べた=写真。
高野山ゲストハウス(撮影:矢野紀行) |
◇高野山ゲストハウス
高野山ゲストハウスは、ユネスコの世界遺産に登録されている高野山に建つ簡易宿泊所で、規模は木造平屋建て96㎡。単純な木架構で構成し、日本建築の良さを表現している。
審査委員長を務めた木原千利氏(木原千利設計工房)は「見過ごしそうになるほど、環境に溶け込んでいて、周囲によく配慮されている。黒い外壁に対する白い内装が効果的な色の対比を表し、ローコストながらプライバシーも守られている。いい意味で質素な建物だが、建築主が建物以上の使い方をしているのも印象的で、建築家と建築主の意思疎通がよく図られていると感じられた」と評した。
竹口氏は「日本建築の美を追求し、遠くから届く光をうまく使うことで熱損失を限りなく少なくした。建築や宗教の聖地である場所における不特定多数を対象にした建築のプロジェクトで、建築家冥利(みょうり)に尽きる内容だった。特に外国人の建築関係者に宿泊してもらいたい」と語った。
摂津本山のデンタルクリニック(撮影:野口毅) |
摂津本山のデンタルクリニックは、幅6m、奥行き35mの敷地に建設した歯科医院で、規模はRC造2階建て延べ223㎡。外構は門型のコンクリート打ち放しだが、内装の間仕切りにはガラスで囲った坪庭を使用し、面する通りからはクリニックの奥までのぞくことができる。
木原氏は「開放感があり、新しい感覚のデンタルクリニックになっている。患者・看護師・医師の動線をうまく配置しており、建物自体もまちから一歩下がった配置で、車による通院者にも配慮されている」と評価した。
宗本氏は「建築主のお父さんが開業している歯科医院のスペースをお借りし、実寸を参考にして丁寧に考えた。ガラス張りとしたのは院内の可視性を高めるためで、間仕切りを坪庭にすることでリッチな空間とした。クリニックの計画は初めてだったが、建築主の懐に飛び込み、考え方を共有することで、完成できた。今回でそのコツをつかんだような気がする」と話した。
今回の新人賞には25作品の応募があった。小島支部長は「例年より応募が多く、審査は非常に困難を極めた。新人賞は作品に対する賞ではなく、作品を通じてそれに込めた思いなどを読み取り、建築家を表彰するもの。受賞された2組には、関西の次代のリーダーになってほしい」とエールを送った。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年5月20日
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