2013/05/05

【現場最前線】気象台業務続けながら施工! 京都地方合同庁舎

現在の京都市中京区に移転し、ちょうど100年という歴史を誇る京都地方気象台。その敷地内でいま、京都地方合同庁舎の建築が進んでいる。国土交通省近畿地方整備局が発注、設計を東畑建築事務所、施工を鉄建が担当している。現在は地下の躯体工事を進めており、今後地上部に移行する。現場周辺は住宅街のため、近隣に配慮して透明の仮囲いを全周に採用した。必然的に整理整頓意欲を高める見える化の取り組みは高い評価を得ており、日本建設業連合会の2012年度快適職場表彰では建設現場を“見える化"した好例として特別賞を受賞している。


完成予想
京都地方気象台は西日本旅客鉄道(JR西日本)山陰本線の円町駅から徒歩5分ほどの閑静な住宅街の一角に位置する。1913年に京都御苑から現在地に移った。工事は気温や雨量などを観測する機器が並ぶ芝生を敷き詰めた観測露場を、敷地の南側に移設した後、埋蔵文化財調査を経て、既存の庁舎と観測露場の間にRC造地下1階地上4階建て延べ4576㎡の合同庁舎を建設する。12年1月から準備作業に着工し、ことし3月末時点の進捗率は38%。契約工期はことしの11月末となっている。

◇測定気温に影響与えない

 施工現場を率いるのは、鉄建大阪支店の松井久雄所長。これまでマンション現場を主体に、福祉施設や商業施設、工場などの建設現場を歩み、作業所長は初めての経験となる。「竣工して、お客さまに喜んでもらう最終目的は公共建築もマンションも同じ」と気負いはない。
 工事は既存の庁舎で執務を継続しながら同じ敷地内で進める。「気象台の業務を続けながらの施工は全国的にも例がないと聞いている」。それだけに近隣住宅への配慮とともに、気象台の業務に対する工事の影響を最小化する工夫が求められた。「たとえば、大型車両の入る場所に通常は鉄板を敷くが、その影響で(観測する)気温が上昇しないよう必要最小限の鉄板敷設にした」

透明な仮囲い

◇全周透明の仮囲いで近隣配慮

 敷地周辺は戸建て住宅が建ち並び、小学校や病院も近い。仮囲いによって住居の1階が暗くなる危惧(ぐ)から、透明の仮囲いを現場の全周に使った。「透明の仮囲いを部分的に採用することは多いが、全周はこれまで例がなかった」という。
 リース品がなく、コストは通常よりも高くなるが、採用すると「現場内をいつも見られている緊張感があり、外部の目が安全作業や整理整頓に対する意識の高まりにつながっている。防犯対策にもなる。困っていることは透明なだけに仮囲いの汚れが目立つことくらい」と笑う。一方で、いつでも中の様子が分かる現場だけに、自然と近隣の工事への関心は高まる。「工事の過程を知り、建設業に対する理解が深まる契機になれば」と期待する。
 騒音や振動対策には万全を尽くした。大型車が入る場所には振動対策を施すとともに、コンクリート打設時の騒音を低減するための防音の仕組みを導入した。

◇現場の基本は整理整頓

 松井所長が現場を率いる上で常に心掛けているのは、整理整頓。「現場がきれいに管理できていると、新しく入場してきた作業員も同様にきれいにしようと考える」。多くの現場を経験してきたが、「整理整頓のできている現場は必ずうまくいく」という経験則が強い信念になっている。
 作業所の職員は松井所長を含めて5人。4月に新入社員が1人加わり、人材育成も現場のテーマに浮上した。「本人がいかに仕事に興味を持ち、自発的に取り組めるかが大切。そのサポートを心掛けたい」。会社が重点現場と位置付けることもあり、現場を担う責任は重い。「09年から3年間は関東で駅ナカの商業施設などを担当した。それら多様なジャンルの経験を生かして竣工を目指したい」と力を込めた。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年5月1日

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